風船をため息で作ろう


やけにくっついてくる奴を無視しつつ息を殺す。本当は直ぐにでも離れたいけど、バレたら元も子もない。

「タイムッターイムッ!!!」
「藤岡さんっ!?」

聞こえてきたのは気持ち悪い声と蘭の驚いた声。飛び出して行きたくなるが、グッと足に力を入れ、踏み止まる。

「いやあ、失敬失敬。さすが空手の関東大会のチャンピオンだ。良い筋肉してる…」
「なっ!!…んっ!」

思わず叫んだけれど口を抑えられた。少し声が洩れたけど良いタイミングで嫌味な高笑いでかきけされた。
危ない危ない。でも今のは僕じゃなくて、藤岡が悪い。しばらくして蘭と藤岡が立ち去った。

「んーーっ!」
「あ、わりっ」
「いつまで口塞いでるわけ?バ怪盗」

解放されたものの脳に蘇るのはさっきの藤岡と蘭の会話。あれはどう考えたって。

「あの話の流れからして、あのオッサン」
「セクハラしてたに決まってる」

考えるだけでも腹がたつ。テロリスト(仮)の分際で。

「あの下衆野郎の事は置いといて…蘭使って急かしたんだからそろそろ聞かせてくれる?」
「やっぱバレるよな」
「蘭に姿を見せることなく、コナンの僕を探してる様な声を聞かせた…ってとこ?」
「あったりー。さすが天音嬢」

パチンと指を鳴らすバ怪盗。はあ…とため息がこぼれた。

「で?黒白、どっち?」

バ怪盗は不敵に笑うと、口を開いた。

「おめーの予想通り……黒だ」

▽▲▽


バ怪盗と分かれた後部屋に戻った。コナンや博士達はいなかったけど、隣の部屋から蘭と園子の笑い声は聞こえた。昼食の時間まで少しあるから各自思い思いに過ごしている様子。

カバンから引っ張り出したパソコンを立ち上げる。大したモノじゃないけど、ただ今となっては仮じゃない、ホンモノのテロリスト藤岡のお仲間さんを炙りだそうと検索をかけ始めた。
まずはあのウエイトレス。でも名前が分かんないから、特定は難しいだろう。

しばらく調べていると、おもしろい事が分かった。どうやら藤岡は、十数年前事件を起こした“赤いシャム猫”には全く関係がない。つまり藤岡のいるテロ組織は“赤いシャム猫”の名を語っているだけ、あるいは“赤いシャム猫”という組織が別に存在するか…の2パターンに絞られる。

勘だと前者な気がする。となると、仲間を炙り出すのは無理。

長く深いため息を吐いていると急に子供特有の高い声が廊下から聞こえてきた。電源を落とし、パソコンをしまう。見計らったかのように、ガチャリとドアが開いた。

「やっぱりルオン君、ここにいたー!」
「ルオン君、団体行動を乱されては困ります!」
「そーだそーだ!団体行動だぞ!」

…いや、アンタ達と団体行動を取った覚えなんかないんだけど。