秘密の言葉に投身寸前


やっと昼食の時間。ダイニングに向かう途中、日売テレビのディレクター水野さんが喫煙室に入っていくのが見えた。
そういえば珍しく迷探偵がこの飛行船に乗ってから一度もタバコ吸ってない。たぶんそれどころじゃないんだろう。

昼食が終わるとウェイターが食後のケーキを運んできた。

「お待たせしました。デザートのケーキです」
「わあ!ありがとうございます!」
「えへへへ、待ってました!」

運ばれたケーキに蘭と園子は目を輝かせる。女の子ってこういうの好きだよね。

ウェイターは僕の近くに来ると、人の良さそうな笑顔を浮かべた。なんだか気に入らなくて、ふいっと顔を背ける。

フォークをケーキに突き刺すと変な感触がした。不審に思いフォークで器用にケーキを開く。すると折りたたまれた小さなカードが混入していた。あいつの仕業に違いない。

振り返れば、案の定ウェイターがニヤニヤとこちらを見ている。さらには口パクで「見ろ」と言ってくる始末。渋々フォークでカードを開いた。

ガチャンッ―――

カードに記されていたのは甘ったるく気持ち悪い言葉ばかり。寒気がして思わずフォークを皿に突き刺してしまった。

顔を上げると同じテーブルに座る全員が不思議そうに僕を見ている。どうやら園子がキッドと何とかって話してるのを遮ってしまったらしい。タイミング最悪だ。

「ど、どうしたの?ルオン君…何か気に障ることでも…」
「…園姉がKIDに盗られちゃうって思っただけ」
「やっばい!私、この美少年君に本気でときめいちゃった!あー!私には真さんがいるのにぃ!」
「あはは!やめてよー!園子が言うと冗談に聞こえないってば!」

何とか誤魔化せた。まあ、隣からとその隣から突き刺さるような視線が痛い。コナンが口を開きかけたその時。

「「「ごちそうさまでしたーーっ!!」」」
「じゃあボクたち、部屋でトランプしますので!」
「お先にーーっ!」
「なんじゃ、忙しない…」

タイミングよく、子供たちが席を立った。これは運がいい。利用させてもらうことにしよう。

「じゃあ、あの子達に着いていこうかな…ごちそうさまでした」

反論される間を与えないよう、すぐに椅子から飛び降りる。前を見ると三人はもう遠くに行ってしまっていた。後ろからの視線が痛いためここはとっとと逃げるに限る。

「博士、ちょっとこれポケットに入れといて」
「ん?おお!わかった!」

去り際、博士に黒いコインを渡す。

部屋に戻りお湯を沸かす。半分は紅茶のために残して、もう半分はそこらへんにあった灰皿に注いだ。そこへカードを沈めると、新たな文字が浮かび上がってきた。

“サンプルが見つかった 後で渡しに行く”

紅茶を入れながら、カードを破りトイレに流した。さすがに機内じゃ燃やせない。

紅茶を片手に、イヤホンを片耳にいれる。聞こえてきたのはダイニングの会話。さっき博士に渡した黒いコインは盗聴器。それがその場の音声を拾って僕に筒抜けというわけだ。

[ええっ!?!?]
[そんなあ!]
[……間違いないんですか?]
[悪戯なんじゃ…]
[いやー残念ながら今本庁に確認したところだ]

上出来上出来。にしても、動き出しが思いのほか早い。とりあえず喫煙室に一回行ってみようと腰を上げる。

残りの紅茶を一気に飲み干すと、インラインスケートを引っ掴み部屋から出た。