嫌な予感


罠を仕掛け終わり、一息ついた。シカマル達の元に帰ろうとした瞬間。

シュッ―――

突然クナイが飛んできた。私はギリギリで避けたが少し頬を掠めてしまう。背中に寒気と嫌な予感が駆け巡った。

「フフフ、さすが木の葉最速と謡われる、水無月一族なだけあるわねぇ」

辺りに反響する声に居所が掴めず、得体の知れない恐怖に襲われる。今の今まで全く気配が読めなかった。

背後に気配を感じたと思った次の瞬間。振り返ろうとするがもう遅い。

「先にサスケくんの元に行こうと思っていたのだけれど…まあ、良いわ。あなたは大事な第二候補だもの」

背後から血が滲んだ頬に手を当てられ、耳元で囁かれる。咄嗟に離れその不気味な奴と対峙した途端、死を連想させるほどの鋭い殺気に足がすくんだ。怯える頭の片隅でこの場にシカマル達がいなかった事に安堵する。

こういう奴には関わらないのが最適だがもう関わってしまったに等しい。ならば取る行動は逃げるのみ。

「そう、逃げる事もないでしょう?」

いつの間に追い付かれたのか目の前には奴が。方向転換してまた逃げても逃げても追い付かれる。

焦りと恐怖に困惑していると、目の前の奴は口を再び開いた。

「その瞳、噂通りね。それにその素早さも…若い頃のキオにそっくりだわ」

その言葉を聞いた途端、思考が弾けた。…キオ…確かにそう言った…言わずもがな、私の父の名。

「フフフ、じゃあ余興はこれくらいにして…私の名は大蛇丸。さあ、殺し合い、始めましょ?」

そいつはニヤリと笑った。

▽▲▽


「はぁ…はぁ…ケホッ…」

静寂に私の荒い息づかいが響く。次に何を仕掛けて来るか…得意の気配察知すらままならないため、もはや戦える状態ではない。むしろ立っているのがやっとだ。

不意に右斜め後方から、左斜め前方から、真正面から…と三匹の巨大な蛇が襲いかかってきた。刀を抜いて構えるが、力が入らない。咄嗟に、刀を地面に突き立て印を結ぶ。

「翠玉結界っ――」

ブォン――――

薄緑色の結界が刀を中心に私を囲む様に張り巡らされた。これは水無月一族特有の刀を媒体として張る、強力な結界だ。

三匹の大蛇は結界に激突。直ぐに跳ね返されて、気の幹にぶつかった。

結界を解くと目眩がしてドサリと倒れ込んだ。どうやら元々少ないチャクラを酷使し過ぎたらしい。もう指一本すら動かせない…そう思った時、

「フフフ…思った以上の実力だわ。やはり水無月一族、キオの娘なだけあるわね」

大蛇丸がどこぞとなく現れた。

意地で刀を頼り、立ち上がろうとするが、直ぐによろめいて膝をついてしまい、そのまま倒れ込む。気味悪く笑う大蛇丸に睨む事しかできなかった。ジリジリと歩み寄ってくる大蛇丸に、私は為す術がない。

「あまりに期待以上だったものだからついやり過ぎちゃったわ…」

私の顔元にしゃがみこんだ。私は出血のせいかは知らないが、全身が軋み意識朦朧で聞き取るのがやっとだ。特に太ももあたりは先ほど蛇に噛まれたからか感覚すらない。

大蛇丸の手が私に突然伸びてきて力強く二の腕を掴まれた。

「キオのは緩めることしかできないけれども…それでもあなたは十分な力が手に入るわ。…フフフ、もしこの大いなる力の使い道を見誤ったら…そうね、私の所に来て頂戴?」
「っ!!?うっあっ!!!」

掴まれた左腕に焼け付くような激痛が走る。左腕だけもげるんじゃないか。あまりの痛さに気を失う直前、見えたのは大蛇丸の満足げな笑みだった。

「キオに伝えて頂戴。そんなんじゃ、私の目は誤魔化せないわよ、と。それじゃあ、また会いましょう?水無月レイちゃん?」

▽▲▽


意識が戻ったのはしばらく経ってからだった。

体のいたる所にある傷の手当を終え、残るは…この鈍く痛む左腕。手袋を外し一番痛む二の腕を晒すと赤い紋様が禍々しく浮かび上がっていた。顎と右手を使い包帯を巻いていく。
今どうこう考えても致し方ない。この試験が終わったら、真っ先に父さんに聞こうと決意を新たにした。


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