死闘の後遺症


サスケに気を取られている間に第三者が入ってきた。

「フン…気に入らないな…」

目の前の音忍に十分に警戒しつつ、上から降り注ぐ声を聞く。

「…翠玉のような瞳…そこにいるのは水無月一族の者か…」

不意に呼ばれた自身の名字に驚いた。初めて視線を上げると、木の枝に仁王立ちしている奴とその影にしゃがんでいる奴の姿が確認できる。

仁王立ちしている奴と、バチリと視線が噛み合った。真珠みたいな瞳だ。

「水無月一族ともあろう者が、何を手こずっているんだ?足手まといでもいたのか?」

仁王立ちしている奴は、フッと笑って偉そうに言った。私はその言葉にわずかな苛立ちを覚える。

何か言い返そうとしたその時、サスケが起き上がり事態は一変した。私は様子がおかしかったため一時ためらったが結界を解く。

取りあえず突然始まったサスケと音忍の戦いに巻き込まれないよう、第10班メンバーを茂みに引っ張り込んだ。念のために私含めた4人を翠玉結界で囲み、様子を見る。

サスケは一体どうしたのだというのだろうか。普段の彼を知らない私がどうこう言えるものでもないが、明らかにおかしい。半身に黒い模様が浮かび上がっている上に、変なチャクラが感じられる。それは先ほど確信した通り、やはりあの邪悪なチャクラは大蛇丸と同じだ。

大蛇丸とやらは何が目的なのだろうか…と私が考え込んでいるとシカマルに肩を叩かれた。

「おーーい、そろそろ戻ってこーい。終わったぞー」
「っ!!」
「お、戻ってきた。あいつらの様子も見たいし、結界、解いてくれねーか?」

シカマルの言葉にチョウジとイノも頷く。軽く謝罪してから結界を解いた。そして刀を背中に収める。

シカマルが立ち上がると、全員立ち上がった。

「よし!めんどくせーけどイノとレイはリーって奴頼む!オレとチョウジはナルトな!」
「うん、わかった!」
「オーケー!」

コクリと頷く。私はリーとやらがわからないため、イノについて行こうとしたが、急に腕を後ろに引っ張られた。誰だかは振り返らなくとも分かる。

「何だ、シカマル」

シカマルは私を黒曜石のような瞳で見据えた。

「大丈夫か?」
「……あぁ、大丈夫だ」

私が思いつめているのに気づいている様な口ぶりに、思わず体が強ばった。否、シカマルの事だから、実際見抜いているんだろう。

「…ま、今はいーか」
「ん?」
「いや何でもねー。悪かったな引き止めて」

そう言ってシカマルはクイっとイノを顎で示した。イノは何故かニヤニヤと口元を緩めている。何か良いことでもあったのだろうか。

「ほら、イノ待ってっから行っとけ。どーせリーって奴分かんねーんだろ?」

言い当てられてしまい思わず苦笑いする。踵を返しイノの元に走った。

▽▲▽


その日の夜。私は左腕を冷やすため川辺にまた来ていた。日中は動いている故、気が紛れるが、夜となるとどうにも腕の痛みに意識が集中してしまう。

ちなみに、今回はシカマルに一言言ってある。直ぐに戻ると告げれば渋々腰を下ろした、あの心配性な幼馴染がふと頭を過る。

それと同時に昼間のサスケの様子も脳裏に蘇った。

サスケにまとわりついていたあの物体がいつのまにか消えていた事、大蛇丸のチャクラが感じられたこと。この2つからして、サスケは何らかの形で大蛇丸に接触し、呪印を施されたと見て間違いない。ということはこの紋様…否、呪印も…そう考えると背筋が寒くなった。

その時、右斜め前方から気配が近づいて来るのを察知。殺気はない。武器を構えている様子も、こちらを伺っている様子もない。

左腕の水を切り、腰元に寝かせてあった大刀を握る。ガサリ…という音と共に現れたのは。

「サスケか」
「レイ!?」

噂をすればなんとやらとは脳内の思考まで影響されるのだろうか。


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