第三関門予選
それから私の名前が電子掲示板に表示される事はなく、着々と試験は進んでいった。
最も集中して見たのはシカマルと音忍の一戦。シカマルは持ち前の頭脳を駆使して、勝利を収めた。試合終了後、シカマルと一番に目が合い、“おめでとう”と“お疲れ様”の意味を込めて、微笑みながら拳を突き出すと、照れくさそうにしながらも拳を突き返してくれた。
そしてついに私一人が残ってしまった。
「ファイトー!レイ――!!!」
「がんばれー!」
「レイちゃーん!頑張れーー!」
「レイ―!一発でKOよー!!」
とりあえず下に下りろという指示に従い、階段に向かう途中、サクラ、チョウジ、ナルト、イノに声援を送られる。
「無理すんなよ」
「善処する」
すれ違う際に拳を付き合わせ、シカマルと短い言葉を交わす。第二試験中の会話と全く同じ内容で顔を見合わせ二人で少し笑った。
下に行くと、父さんや火影様、審判が集まって話し合いをしていた。しばらく待つと、ようやく話がついたらしい。
「奇数だったため一人余りました。よって次の試合の対戦者は希望者を募ります。勝った人が希望した場合、何も加算されません。ですが負けた人は敗者復活という形で、勝ち上がる事ができます」
途端に試験会場が騒がしくなるが、瞬身で現れた砂のひょうたんの忍びと目線がかちあった。途端に会場が静まり返る。
「……両者、依存はないですね?」
お互いに静かに頷く。私が本当は首を振りたかったのは言うまでもない。
さあ、どうする…相手は砂を使った遠距離攻撃、近距離は絶対防御。こんなの勝てるわけない。だからといってここで死ぬのも嫌だ。それだけはごめん被る。
少しずつ作戦を仕上げながら、ふと相手を見るとわずかに口角が上がっている。その様にゾワリと背中が泡立った。正気じゃない。
「では第11回戦、始めてください!!」
開始合図の次の瞬間、飛び出した。相手の背後に回り込む。砂の大半がまだ私がいた位置に向かっている途中。理由は明白、私の速さについていけてないのだ。
しめたと思い、水無月家特性のクナイをその砂の塊に投げ、翠玉結界で砂ごと結界に閉じ込める。
それからも、同じ動作を繰り返した。ある時は走り回り、ある時は大刀で切断し、砂をいたる所に分散させ、次々と結界に閉じ込めて行く。時折、本体に攻撃も仕掛けたが、砂の鎧で大したダメージにはならなかった。
そしてわずか一分後。砂が入った結界が複数散らばる中、私は一息つく。全ての砂を結界に閉じ込めることができた。
その時、ズキリと左腕が痛んだ。痛みに耐えるため、大刀を地面に突き刺し、自身の体を支える。目の前では、相手が瓢箪を砂に変え始めていた。
あの瓢箪の砂さえ、私の結界に閉じ込めてしまえば、相手の攻撃の手はないはず。そう考え、“先手必勝”と掲げたのに、これでは水の泡だ。
決意した私は、右手のクナイを大きく振りかぶる。
「あんのバカ!!」
「何やってんだってばよ!レイちゃん!!」
「キャアアアァッ!!!」
イノの叫び声が心に突き刺さった。
ポタリ、ポタリと地面に滴り落ちる赤い血。思い切りが良すぎて、思ったより深く斬ってしまった。
だが先ほどの嫌なカンジの痛みは薄れた。貧血になる前にとっととケリをつけてしまおう。
ポーチから巻物を取り出し、空中で一気に開いた。血が付いた左手を巻物に描かれた円の真ん中におく。
「口寄せの術!」
巻物から水が溢れ出し相手を襲う。砂に防御をされるがそれがこちらの狙い目。水を吸った砂は重くなり動きが鈍くなる。塊やすくなる。この上ないほどの私に好都合だ。
クナイを放り結界を張る。水は続いて相手を襲った。直ぐさま近寄り右手をかざす。
「水牢の術」
これで終わったと思った時、目の前にひとつの目玉が転がっていた。気味が悪く、一瞬体が強ばったが、審判はこれで勝負がついたと見たらしい。
「勝者、水無月レイ!」
朗々とした声が会場に響いた途端、会場が一気に騒がしくなった。
…あれ…世界が傾いていく…あぁ、案の定貧血か…
意識が遠のいていく中、駆けつけてくるシカマルの姿を最後に私は意識を失った。