久しぶりの休息


辺りに不気味な気配が漂う。ここは……?右も左も分からない。

突如、後ろからニュッと誰かの舌が伸びてきた。私は何故か金縛りにあったように動けないでいる。ニョロニョロと舌が肩口で波打っているのを横目で確認すると同時に、冷や汗が頬を伝った。

“…フフフ…フフフ…”

突然、辺りにあの独特な笑い声が四方八方から響いてきた。

“もしこの大いなる力の使い 道を見誤ったら…“
“ そうね、私の所に来て頂戴?”
“水無月レイちゃん?”

「おい!レイ?!しっかりしろ!」

私はゆっくりと瞬きを一回二回と繰り返した。ここは…

「だ、大丈夫か?!」
「シカ…マル…?」

そうか…私倒れたのか…

ここは治療室と考えるのが妥当だろう。起き上がり辺りを一通り確認する。ベッドの横にいたシカマルが、心配そうに私の背中をさすってくれた。

「…気分はどうだ?」
「問題ない…心配かけた…すまな「馬鹿野郎っ!!!!」

謝罪を述べていた途中、シカマルに頭を抱え込まれた。

「オレをどれだけ心配させたら気がすむんだ!」

突然のことに瞬きを繰り返す。けれど、シカマルが少し震えているのに気がつき、ふと我に帰った。

「…レイが倒れた瞬間、頭が真っ白になった…お前に何かあったら…オレは…」
「大丈夫だ、私は生きている」

そう言うと、一層強く抱きしめられた。

▽▲▽


その後、医療忍者の方々から、無事帰宅許可がおりた。
帰り道、シカマルから本選の詳しいことを聞き、その際、私が音忍(名前は忘れたが、確かチョウジと一戦を交えたヤツだったと思われるそいつ)と初戦に当たることになったと聞かされた。

チョウジの仇となるのか…まあ取りたいとは思っているが、こういうのは自身が取らなくては意味はない。

家に帰ると、真っ先に母さんに迎えられた。どうやら帰宅の連絡が届いていたらしく、今か今かと私の帰りを待ちわびていたらしい。

「そういえばキオから伝言で、話しがあるから縁側に来いーって言ってたのを伝え忘れちゃってたわ」

…そのような大事な言伝は忘れないでくれ…と言うこともなく、心に留めておく。このようなこと今に始まったことでもない。昔から母さんはどこか抜けているのだ。それに父さんも母さんに頼むくらいの言伝なのだから、そこまで急ぎでもないのだろう。

縁側から聞こえてきたのは、一振りの素振りの音。鋭く、重く、重圧感のある空を斬る音に体が、心が、震えた。久しぶりに聞く、父さんの素振りの音だった。

無意識にも早足になりながら、縁側に向かう。案の定父さんが縁側近くの庭で真剣を片手で握り、素振りを行っていた。

何故、片手なのかというと、私が幼い頃、任務で負傷してしまい、もう二度と右手は上がらなくなったらしい。が、父さんは忍びとして生きる事を辞めず、一線さえ退いているが、立派に忍びとして、上忍として任務をこなしている。

改めて父さんの洗練された剣捌きを見ると、やはり己との縮まらない差を目の当たりさせられた。

「帰ったな、レイ」
「只今戻りました…」
「ま、ほら、こっち来い!堅っ苦しいのもなしにして、ちょっくら話さねェとな」

父さんは先程までの張り詰めた空気はどこへやら、破顔させ、満面の笑みで縁側に腰を下ろした。私もその隣に腰を下ろす。

「とりあえず、試験お疲れさん。本選に行きやがるたァ…驚きだな…よく頑張ったな」

トントンとリズムよく頭を軽く叩かれる。私はそのせいか、少し心の荷が下りた気がした。


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