左腕と過去の真相
「気張りすぎてるってシカクんとこの息子が言ってたぞ」
「シカマルが…?」
彼は試験中は普段以上に気にかけてくれた。明日にでも礼を言いに行くとしよう。そんな思いとは裏腹に、重くなった口を動かした。
「私があの三人を……守ろうと思ったんだ…」
そう口にすると、父さんは私の頭においていた手で、ガシガシと撫で始めた。私はグラグラと揺れる視界に、気持ち悪さを覚えた。
「ばっか野郎…あのなァレイ、何の勘違いしてんだか知らねェけどな、俺はあの三人を守れだなんて一言も言ってねェぞ」
「え?」
「…まっ、俺がちゃんと言わなかったせいもあっかな」
父さんは私に目線を合わせ、私の目をまっすぐに射抜いた。
「いいか?よーく聞いとけ。俺がおめェにこの金のピアスを託したのにはな、理由があんだ。あの三人の連携が上手く繋がるようまとめてやって、その穴を補う…要は三人の補助みてェなのをおめェに託した証なんだよ。守るって言葉を吐くなんざ、まだまだお子様にゃ早ェよ」
父さんはニカリと笑うと、「俺みてェになってから言えってーの!」と言って一層笑った。私は何を言われるのかと身構えていたが、その笑顔も相余って拍子ぬけてしまう。
「ん?わかったか?」
私はしっかりと頷いた。
「さーてと、そろそろ本題に入るとすっか」
父さんは軽く伸びをすると、胡座をかきなおした。私も自然と気が引き締まる思いで、背筋を伸ばす。
父さんから語られた真実は私が知りたくなかった、けれど知らなくてはならない…そんな内容だった。
驚いたのが、私の母さんが実はうちはの血を引く者だったということ。だが母さんはその少しのうちはの血ではうちは一族の能力を開花できず、普通の忍びと何ら変わりはなかった。
そして水無月一族当主、水無月キオと結婚し一人の娘を授かった。その娘こそが私、水無月レイだ。私は生まれた頃から翠玉眼を開眼していることから、人に敬遠され、畏れられ、妬まれ…そのような幼児体験からか、私は必要以上に語らず心を開かなくなったという。
そして四歳のある日の真夜中、私は突然苦しみだした。父さんと母さんは心配し駆けつけると私の眼は写輪眼になったらしい。私は薄いうちはの血で、しかも幼少期に写輪眼を開眼させたのだから驚きだ。
父さんは私の才能に将来立派な忍びになると嬉しくなったが、同時に大きな不安を抱いた。扱いの難しいと言われる翠玉眼に加えて写輪眼。この二つを支え切れるのか…と。そこで、両親は私のためを思い、写輪眼を封印することにした。
「写輪眼を封印するのは不可能だ」と里の誰もが言ったが、父さんはその偉業をやってのけた。自身の右腕を犠牲にして。
この情報が大蛇丸の耳に入り、私の写輪眼欲しさに封印を弱め覚醒を促しに来た。というのがこの試験での真相だったらしい。
「父さん…」
全てを聞いた後、やっと紡いだ言葉は頼りなく掠れていた。にも関わらず、父さんは私を落ち着かせるように頭に手を置き目元を和らげる。
「何だ?ゆっくりでいいぞ?」
「ごめんなさ…」
「はああああっ!?!?」
先程までの優しげな父はどこへやら、私が最後まで言う前に大声で怒鳴った。私の耳元でわざわざ叫ぶものだからあまりの煩さに気が遠くなる。
「なんで謝ったんだ!?謝る要素が今、どこにあったってんだ!」
「右腕が…」
「んなもんなあ!愛しい我が子のためなら痛くも痒くもねェんだよ!!俺が自ら望んでそうしたんだっつの!親が子供を一番に考えんのはあたりめェなんだよ、わかったか!」
熱く語る父さんに少し気圧されながらも、私はうなずいた。余計なこと言わなければよかったかもしれない…と内心後悔しながらも、私の嬉しさと気恥かしさが混ざったような心境だ。
そんな私と父さんを、縁側の曲がり角から母さんが嬉しそうに眺めていたのに気づき、更に気恥かしさが増した。