幼馴染とは厄介なモノ
瞼は朝日が差し込む前に自然と開いた。伸びをしながら昨晩、寝る前に父さんから言われた言葉を思い出す。
「一ヶ月後の試験までだけどよ、俺は準備で忙しいから修業は見れねェ。代わりにカカシに見てもらえ。あいつァサスケとかいうガキも見るらしいが…まあ問題ねェだろ」
「二人とも写輪眼の持ち主だ。写輪眼の使い方をよーく教わってこい!そればっかりは俺じゃ教えてやれねェからなァ…」
との事だった。色々と思うところはあるが、合流するのは明日の午後からなので、これからシカマルの所にでも行くとしよう。
「御免ください」
奈良家の玄関先に顔を出す。私はシカマルの事だからまだ修業には出ていないだろうと思い、ここに出向いた。
シカマルの母、ヨシノさんが奥から出て来て顔を綻ばせた。
「あら!レイちゃんじゃないの!さあさあ!上がって上がって!」
「お邪魔します」
「シカマルーー!!!!レイちゃん来てるわよー!!いい加減起きなさぁーい!!」
もうそろそろ昼時だというのに。実にシカマルらしい。自然と口角が上がった。
「まだウチの息子寝てんのよ。昨日よっぽど疲れたみたいでね?もう帰ってきた途端、ぐっすりよ」
「そうでしたか」
「レイちゃんも昨日、お疲れ様!本選、頑張ってね。私、自分の息子以上に応援しちゃうから!」
前を歩くヨシノさんがたまに振り返りながら、楽しそうに言う。私は短く礼を言うことしかできなかった。
「あ、そういえば、レイちゃん、倒れたんだって?」
「はい、ですがもう大丈夫です」
「ならいいんだけどねえ…女の子は体を大事にしなきゃダメよー?レイはいっつも無理すんだーってシカマルがよく嘆いているんだから!」
シカマルには今回も多大な心配をかけてしまったようだ。
私はシカマルが起きてくるまでの間、いつものように棋譜を並べながら待つことにした。
「随分と寝ていたものだな」
「くぁ……お前は随分と早起きだな…ふぁ…」
欠伸をしながら縁側にやって来たのは私の予測した通り、シカマルだった。
「もう昼時だぞ?」
「んー…そうは言ってもなあ…」
彼は再び欠伸をしながら縁側に腰掛ける。私も並べていた将棋の棋譜を片付け、横に並ぶようにして座った。
二人して何を話すでもなく、ただ空を並んで見上げる。
「なんかこーして、二人でボーッとすんの久しぶりかもな」
「そうかもな」
しばらくそうして時間を過ごしていると、シカマルが口を開いた。
「で?話してくれんだろ?」
隣を見るといつの間に私の方を向いていたのやら、彼はニヤリと笑った。一瞬面食らったが、佇まいを正す。
おずおずと口を開き、私は父さんから聞いた事や試験であった事、私の感じた事や考えた事も含めて、全てをシカマルに語った。
その後、奈良家で昼食を頂きシカマルと将棋をさし、いつもの雲を眺める場所に移動しのんびりと過ごした。シカマルも明日から修業が始まるようで今日一日は私と過ごすつもりだったんだとか。
「シカマル」
「んぁ?んだよ」
「その…心配ばかりかけてすまない」
私が昨日の夜から思っていた事を言うとシカマルは深く息を吐いた。背中合わせに座っているため表情は分からなかったが、眉間にシワを寄せている顔が簡単に想像できる。
「あのなぁ…別に心配すんのはオレの勝手だろ、何もレイが気にする事じゃねぇよ。ま、無茶すんのはやめて欲しいけどな」
「………」
「っつっても無茶すんのがレイなんだけど」
「………」
図星過ぎて何も言えない。シカマルは私のどこまでを理解しているのだろうか。
ふわりと風が辺りを一掃するかのように吹いた。私の髪もシカマルの髪も風に攫われる。
「…あんま生き急ぐ様な真似ばっかすんなよ…」
少しくぐもった声が聞こえた。長く一緒にいすぎると顔を見ずとも分かり合ってしまうのは便利ではあるものの、不都合を生じることもある。
シカマルの表情を想像して胸の奥が軋むのを感じた。