特別修行開始
「少しは覚えてくれてたのかな」
カカシ先生は私の左腕に術を施している逆の手で、私の頭を撫でた。
「実はレイちゃんが小さい時はよく、遊んであげたり、二ヶ月くらい一緒に暮らしたこともあるんだよ」
懐かしむ様に言うカカシ先生。それとは対照的に私は驚きの余り声すら出なかった。初対面だと思っていたのに、すでに小さい頃お世話になっていたとは。
「まぁ、レイちゃん、その頃まだ一歳とか二歳だったし、覚えてないのも当然でしょ」
ポンポンと軽く頭を叩かれると罪悪感が少し軽くなった。
それにしても何故二ヶ月という中途半端な期間、一緒に暮らしてたのだろうか。帰ったら父さんか母さんに聞いてみよう。悶々と考え始め、自分の世界に入りかけた時。
「はい、ストップ」
カカシ先生から声がかかった。はっと意識が浮上する。
「昔からこの癖は治らないねー」
そう言って笑うカカシ先生。少し恥ずかしくなって視線を地面に落とした。
カカシ先生のおかげで写輪眼と翠玉眼が使えるようになった。しかし生まれつき持っていた翠玉眼と違って後天的に覚醒した写輪眼はとてつもなく使いにくい。
似ているようで似ていないこの二つの瞳術。大きな違いはチャクラの消費量。写輪眼のチャクラ消費が膨大で、その上維持するにも不安定。直ぐに翠玉眼に戻ってしまう。
そんな私にカカシ先生は組み手の修行を提案してくれた。写輪眼の維持時間の延長に加え、写輪眼への慣れ、そしていつも剣術に頼りがちな私の体術の能力向上も目論んだものらしい。
今日はカカシ先生が野暮用だと行って出掛けていき私は自主練習をしていた。
「ただいまー、レイちゃん」
そう言って手を振るカカシ先生の横には、見覚えのあるヤツが。
「な!なんでお前がここにいる?!」
「まあまあサスケ、いい忘れてたけど、彼女一緒に修行する事になったなら。修行仲間として仲良くね」
サスケはさっきの驚いた様子とは打って変わって興味ないとでも言いたげな態度で鼻を鳴らした。しかしその目はしっかりと私を捕らえている。
そういや試験中に興味持たれたんだったな…と、ぼんやりと思い出した。
その日の夜。私はなかなか寝付けず夜空を眺めていた。
ここ最近、夜になると決まってシカマル達の事を考えてしまう。シカマルはちゃんとめんどくさがらずに修行しているか、イノはサクラと喧嘩していないか、チョウジは食べ過ぎてないだろうか。
思えばシカマルとは幼い頃から毎日のように一緒に過ごして育ってきたため、こんなに長時間離れたのは初めてだ。言い表せない感情に襲われ、思わず身震いする。私は立ち上がると岩を蹴って走り出した。
着いた先は木の葉隠れの里。夜明けまでには戻る。そう自身に言い聞かせ、再び地面を蹴った。
山中家にたどり着くと、外からイノの部屋の明かりが付いているのが見えた。まだ起きてるのか、あるいは…
近くの木からイノの部屋の中を覗くと、明かりを付けっぱなしにしたまま、机に突っ伏したイノの姿があった。窓から部屋に忍び込み、イノをベッドまで引きずり入れて電気を消した。こんなにしてるのに起きないとは、どれだけ疲れているんだろうか。
秋道家にたどり着くとチョウジはぐっすりと深い眠りについていた。
「焼肉…最後の一枚…」
寝言を聞いてしまい、頬が緩む。チョウジに布団をかけ直し終わると窓の縁を蹴り闇に飛び出した。
奈良家の庭に足を着けた。鹿威しの音が響く。私はクルリと振り返り、縁側に腰掛ける者に声をかけた。
「何故起きてる」
「そろそろだと思ったんだよ」
「何がだ」
「寂しさに耐えられなくて一回顔見に戻って来んじゃねーかなぁってな」
シカマルはニヤリと口角を上げた。「ちげぇの?」と言いながらクツクツ笑う。図星で言葉が出ない。シカマルは私の目の前に立ったと思うと突然引き寄せられた。
「ま、オレもそろそろ限界だったからな…」
そう耳元で呟かれたシカマルの声。あぁ、やっぱりシカマルの空気が一番しっくりくる。数年ぶりの再会にすら感じられるほど、私はシカマルに会いたかった事を実感させられた。