赤い嵐の到来


近くの岩に腰掛けて水筒に口をつける。今日の私の修行は終わった。今カカシ先生はサスケの相手をしている。

ふあ…っと欠伸が出そうになるのを噛み殺して、サスケの修行風景を眺める。欠伸が出るのは致し方ない。昨日の夜中、シカマルが起きていたせいで思ったよりも時間を食ってしまったせいだ。まあ、自業自得だけど。

ふと、一つの気配を感じた。迷いなくこちらに真っ直ぐ向かってきているようだ。様子を伺っていると奴は私の腰掛ける岩の前にある、大きな岩陰にそいつは身を潜ませた。

私が気づいているという事は、カカシ先生は必ず気づいているはずなのに泳がしている。何か理由があるのだろうか。

それにこの気配…どこかで…

思考を巡らせていると、浮遊する、一つの目玉とバッチリと目が合ってしまった。瞬時に体が硬直する。冷や汗が頬を伝った。

この不気味な目を見るのは二度目だ。瞳の奥にある黒いダイヤに異様なほど不気味さを覚える。

脳裏に浮かび上がるのは、赤髪の砂の忍び。

何しに来たのだろう…もしや、私への報復?正直もう一度やったら私は死ぬだろう。試験で勝てたのは、私の勘、相手側の私の情報不足、そして審判がいたからだ。

「サスケ、もう一度だ…」

カカシ先生がサスケに声をかけた時、私が手裏剣を素早く放つのと砂の忍びが動くのは同時だった。

「翠玉結界――!」
「「!?!?」」

私、サスケ、カカシ先生の三人の周りに薄緑の膜が張る。サスケと砂の忍びは突然の事に驚いたみたいだったが、カカシ先生は分かっていたかの様にゆったりと口を開いた。

「さすがレイちゃん、仕事が早い」
「ありがとうございます」
「で、殺気丸出しで何の用かなウチの子らに」

返答はない。しばらく恨めしげにこちらを睨んでいたかと思えば、突然頭を抱えこちらに背を向けた。

「忘れるな…お前らはオレの獲物だ」
「…待て!何故…そこまでオレらにこだわる?」

サスケが訝しげに問う。翠玉結界を挟んだまま睨み合いになりしばらく沈黙が続く。砂の忍びは私とサスケを交互に見てからサスケを再び睨みつけた。

「本当の孤独を知る目…」
「!!」

砂の忍びの一言に体を揺らしたサスケ。いつもの私ならこういう場面では、興味ないと言って空でも眺めているのだが、何故かそれができない。

「そして…それがこの世の最大の苦しみであることを知っている目…言ったはずだ、お前はオレと同じ目をしていると…力を求め憎しみと殺意に満ちている目…オレと同じ…己を孤独という地獄に追い込んだ者を殺したくてウズウズしている目だ」

後でサスケの事、目の前の砂の忍びの事を調べておこう…そうしないとダメな気がする。所謂、直感だ。

「そして、お前…」
「!!」

突然、私の方に殺意を向けられ、反射的に大刀に手を伸びた。

「お前はオレと真逆な…孤独を知らぬ目…そして…いつも誰かが何とかしてくれる…そう信じて疑わない目と…何とかなるだろうという甘い考え…それがオレは憎い…!!!」

言葉と同時に翠玉結界に砂が激しくぶつかり、バチバチと音をたてた。

「ハイ待った…我愛羅とかいったな…」

砂が引いた頃カカシ先生の止めが入った。この砂の忍び、我愛羅というのか。覚えておこう。

「お前がサスケやレイちゃんの何を知ってるかは知らないけどね…二人の全てを見透かすような言い方はダメでしょ!本線前にこんなとこまで嗅ぎつけて来て、一体何が言いたいの?」
「戦いとは他者と自分の存在を賭け…殺し合うことだ…勝った者だけが己の存在価値を実感できる」

我愛羅のその言葉と目に畏怖を感じた。何がそこまで彼をつき動かすのだろうか。

「…つまり言いたいのは…試合ではなく殺し合いをしようぜってことかな?」

カカシ先生の声は聞こえていないのか、答えることなく、我愛羅はサスケを見た。

「うちは…お前も…本当は望んでいるはずだ…心の奥底で…自分の存在価値を確かめたい…果たして自分は本当に強いのか?その殺意に満ちた目を向ける相手より、本当に強い存在なのか?」

そして先ほどの様にまた私を見る。

「水無月…お前は存在価値を強さだと思っているみたいだが、それは違う。殺し合いをして勝ち、それで初めて本当の存在価値がある……いつか必ず殺してやる…待っていろ」

最後に一睨みしてから去っていった。まるで嵐のような人だ。


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