血は争えない
その晩、当然眠れるはずもなく川岸に腰掛けていた。キラキラと輝く川面が眩しく見えて膝に顔を埋める。
次々と我愛羅に言われた言葉が鮮明に思い出された。
「オレと真逆な…孤独を知らぬ目」
「いつも誰かが何とかしてくれる…そう信じて疑わない目と…何とかなるだろうという甘い考え…」「オレは憎い…!!!」
「存在価値を強さだと思っているみたいだが、それは違う」
「殺し合いをして勝ち、それで初めて本当の存在価値がある」
「いつか必ず殺してやる…待っていろ」
全くもってその通り、図星だ。自分の奥底に潜んだ甘え。いつも無関心を装い、他人任せにして自分は一線引いたところで傍観し、現実から目を背けて来た。
私の無関心はただの自己防衛でしかなかったのだ。
他人にその事実を突きつけられた不甲斐なさに唇を噛み締める。こみ上げる何かを振り切るように思いっきり目元を腕で擦り顔を上げると、サスケが丁度この川岸にやって来たところだった。
サスケの近くに腰を下ろすと彼も近くに腰を下ろした。お互い顔を見合わせるでもなく川に眺める。
「昼間の件もある…良かったら、話してくれないか?」
「珍しいな、お前が他人に興味を持つなんて」
「嫌なら良いんだ…無理強いはしたくない」
「いや、同じ写輪眼を持つ者として知っといた方が良いかもな」
サスケの口から語られた物は私が思っていたより、はるかに残酷な話だった。
尊敬していた兄が一族を皆殺しにしたという事、一人だけ生かされたという事、その生かされた意味、そしてどれだけ兄を憎み殺したいかという事。
この時、一族という言葉に妙な引っ掛かりを覚えたが今はそんな事を気にしている場合ではない。
再び沈黙が訪れる。先に沈黙を破ったのは私だった。
「サスケの強さは憎しみ故…ということか…仇討ち、できると良いな」
「お前…」
「否定するとでも思ったか?」
「…あぁ」
「結局は本人の意思だ。サスケにとってその行動が意味を成すならば、そうすればいい」
「……面白いな、お前」
顔を上げるとはにかんだ横顔が見えて少し安心する。この時、影から見守られていたとは、私とサスケが知る由も無い。
遂に今日は試験当日。カカシ先生と組手を行っていると、カカシ先生は突然何か閃いたのか目を見開いた。
こういうカカシ先生の思い付きはろくなもんじゃないのは、この短い修業中に経験済みだ。サスケと私は顔を見合わせる。
「そうだ、二人で前試合でもやってみよーか」
「「!!!」」
項垂れる私に対し、サスケは嬉しそうに目を輝かせた。それもそうだ。サスケは事あるごとに私と練習試合をしたいと言っていたが、カカシ先生が必ず却下していたのだから。
「あ、そうそう。レイちゃんは翠玉眼じゃなくて写輪眼でね?まあ、本当にヤバくなったら止めに入るから大丈夫でしょ」
「その必要はありません…サスケ、試験出来なくなっても知らないからな」
「その言葉、そのままそっくりお前に返してやるよ」
「いや試験できなくなっちゃうと困るんだけど…」
売り言葉に買い言葉。私らしくないが、不思議と嫌ではなかった。
全体重を掛け、馬乗りになると素早く苦無を取り出しサスケの動脈にあてがう。途端、静かになりお互いの荒い息遣いがこだました。
目の前のサスケは、悔しさに顔を歪ませ、こちらを思いっきり睨んでいる。私はサスケが反撃できないように押さえつける力を強めた。写輪眼の中に写輪眼の私が写っていて、何とも言えない気持ちになる。
「はい、そこまで」
そこでカカシ先生の止めが入ったため、サスケの上から下りる。
「この勝負、レイちゃんの勝ちということで…二人とも異論ないよね?」
「はい」
未だに睨みを効かせているサスケの視線は無視するに限る。
最初はやはり慣れない写輪眼というのもあって押されていたが、サスケの動きをコピーする内に確実に使いこなせる様になってきた。
要はカカシ先生が私とサスケを戦わせた意図の裏には、二人のウォーミングアップの為、そして私の写輪眼完成の為とサスケのモチベーションを上げる為でもあったということだ。