最中の出来事


「勝者テマリ!!」

わあっと会場が湧いた。私はただ呆然と立ち尽くす。

テマリの洞察力と技の威力。それを凌ぐ頭脳を駆使したシカマルの試合運び、影真似の有効的な活用法、冷静な状況判断力。そして最後に下したギブアップの決断。あれはリーダーに最も大切な、仲間を守る為の決断だ。

「なんでギブアップなんかすんだってばよアイツ!バッカじゃねーか!!何か腹立つ!!ビシッと説教してやる!!」

ナルトは私の考えとは全く違った様で、憤慨し飛び降りていった。直情的なナルトの行動に思わず感心してしまう。

「説教は難しい、相手を怒らせてはいけない…」

隣でシノが静かに言う。私は彼がいたことに今気がついた。

この試合の結果で私の対戦相手がテマリに決まった。実は対戦相手の音の忍びが棄権したらしく、私は不戦勝扱いとなったと先ほど知らされたのだ。

シカマルを見つめているとモヤモヤした気持ちを抱えているのに気がついた。私は案外シカマルと一戦交えて見たかったのかもしれない。

▽▲▽


サスケの対戦相手である我愛羅は物凄い殺気を振りまき、私を一睨みしてから後ろの階段を下りていった。もう睨まれても、殺気に当てられても軽く流せるようになったのは慣れだろうか。慣れとは恐ろしいものだ。

その様子を見てテマリやカンクロウが驚いていたとは私が知る由もない。

下を見るとシカマルとナルトがゆっくりと出入り口に消えていくのが見える。ナルトの表情からしてシカマルに嫌味の一つでも言われたのかもしれない。あれでいてシカマルは根に持つタイプだ。将棋しかり囲碁しかり。

カカシ先生が瞬身で私の隣にやって来た。

「いやー、レイちゃんの口添えのおかげでサスケが失格にならないで済んだよ。ありがとネ」
「それは光栄です」

「カカシ先生が私にそうしろと言ったからだろうが」という愚痴は心の中に留めて置く。カカシ先生は、「じゃ」と片手を上げて再び瞬身でどこかに行ってしまった。礼を言うだけの為にここに足を運んだろうか。案外律儀な人だ。

下を見るとそろそろ試合が始まりそうな空気だった。欄干に手をつく。同じ修行仲間として修行の成果と試合を見届けよう。

「始め!」

試験官の掛け声と同時に我愛羅の砂が瓢箪から出てきた。サスケは瞬時に後退する。

しかし、突然我愛羅は頭を抱えてしまい何か呟いているようだが全く聞こえない。テマリとカンクロウも何やら小声で話している。聴覚にチャクラを集中させると会話が聞こえてきた。

「…戦う前からあそこまでなった我愛羅は初めてだ…」
「そこまでの相手ということか…アイツ…」

そこで会話は終わってしまい、中途半端な情報しか得られなかった。ただ我愛羅がそうとう危ない状態だと言う事は分かった。


その後我愛羅の頭痛が収まり試合再開。

我愛羅の砂の盾もスゴイがサスケもスゴイ。先ほど私と前試合した時以上の速さが出ている様に見える。一試合ごとに強くなるサスケの成長スピードに目を見張った。

それにしてもシカマルとナルトが帰ってくるの遅い。いささか心配になった私はサスケの試合よりもシカマル達の安否を確かめに行くことにした。

控え室から階段を下りて行くと鼻に突くような生ぐさい臭いに気がつく。急ぎ足で角を曲がると、血溜りが広がっていた。廊下一面にこびり付いている血や肉塊。激しい吐き気に襲われた。

同時に考えたくもない予想が頭の中を駆け巡る。そんなわけない、と頭のどこかで否定するも目の前の現状は変わらない。動揺からか焦点合わないまま震える足で一歩を踏み出すと。

カツン―――

何かが足に当たった。見れば血まみれの額当てが足元に転がっている。恐る恐るひっくり返してみると、草隠れのマークが印されていた。途端、全身の力が抜けて安堵のため息が漏れた。

とりあえずこの事を誰かに知らせなくてはならない。

血溜りを踏まぬよう助走をつけてからジャンプして向こう岸に辿りついた。空中にいた最中、視界の端に写った物を思い出し顔が歪む。何故なら目に入ったのが壁にこびり着いていた血と砂だったからだ。

確信を持って言える。こんな異業をやってのける人物は私の知る中ではただ一人。誰に報告しようか、と悩んだ末に出た答えは。

「カカシ先生に知らせなくては」

再び血溜りに向き直り、手を合わせてから駆け出した。


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