己のすべき事


アクシデントで高揚していた気持ちが、父さんのお陰で落ち着いてきた。それによって色々な物が聞こえてくる。

里を揺るがすような地響き。人々の悲鳴。試験会場の戦闘音。

目を閉じて深呼吸する。

今、私のすべき事は何か。今、私に出来る事は何か。今、私が最優先しなくてはならない物なにか。

再び瞼を上げた時、私は瞳を写輪眼に変えた。会場全体を見渡しす。

「一般観客席とこの大名席を含めて、まだ紛れ込んでいるのは三人。どれも中忍以下のレベルだ」
「ほう…写輪眼、使いこなせてるみてェだな」
「だからここは任せて母さんや猪鹿蝶の所に行ってくれ」

父さんを一瞬驚いた様子だったがガシガシと自身の頭を掻いた。

「かァー!言うと思ったぜ!あのなァ愛娘を置いて行けってのか?酷な話だろ?」
「………」
「…っつっても、母さん譲りの頑固な性格のおめェにゃ言った所で考えが変わるわけあるめェ」

父さんは刀を仕舞い私に背中を向ける。その背中がとてつもなく大きく感じた。

「ここは、レイに任せっからな」
「はい」

二人同時に地面を蹴り上げる。父さんは結界の外へ、私は紛れ込んでいる音の忍びの元へ。

修行の成果の見せ所どころだ。高鳴る胸を無理やり押さえ込んだ。

▽▲▽


「ハッ…ハァ……」

切れる息を落ち着かせようと深呼吸を繰り返す。やっと三人を片して一息つく事ができた。

掠り傷ひとつ負うことなく無事だったのは修業の成果だと思う。ただ紛れていた忍びの中に砂の忍びがいたのは想定外だった。おそらく大蛇丸と手を組んだのだろう。

母さんは無事だろうか。シカマルは大丈夫だろうか。我愛羅はどうなっただろか。サスケの呪印は暴走していないだろうか。

様々な心配事が頭を駆け巡る。疲れた体とは反対に脳は元気みたいだ。

特にシカマルが私は心配だった。理由は簡単、直感だ。本音を言えばここを抜け出して母さんやシカマルの元に行って安否を確認したい。それでも。

「ならばここは任せる!」
「ここは、レイに任せっからな」

すぐ思い出せる、暗部の人と父の声。

ここを離れるわけにはいかない。木の葉を護る一人の忍として。自分の出来る事を全うするのみ。

そう自分に言い聞かせ、行きたいと主張するもう一人の自分を殺す。そうでもしないと簡単にシカマルの元に行ってしまうだろう。


物見やぐらの屋根を見ると屋根には薄紫の四角い結界が張られていた。その中で火影様と大蛇丸が死闘を繰り広げているのだと思うと、何もできない自分に歯がゆくなる。

ただ、私にできることは他にある。私は眠っていたキバをヒナタの隣に仰向けに寝かせた。

「解っ!!」
「んぁ…?……ってあ゛ぁ!?レイ?!」
「ん……あれ、私…」

キバは飛び起き、ヒナタはゆっくりと体を起こす。二人が覚醒したのを確認して腰を上げる。

「少し待ってろ、いいか、動くなよ?特にキバ」
「どう言う意味だ、それっ!」

立ち上がり他の未だ眠っている忍びを起こしに回る。後ろで何か喚いてる気がするが無視。

起こしに回っている途中、松葉杖を持ったリーがいた。コイツは、起こさない方が良いだろう。あの暑苦しい性格からして、余計に動き回られて怪我を悪化されたらこっちも気分が悪い。

そして一旦、起こした忍びを大名席に集めた。

「こんな所に私達を集めてどうするの?」
「つか俺たちも手伝いに行った方が良いんじゃねーの?なぁ、赤丸!」
「ワンッ!」
「レイは何か考えがあるんだ」
「そうよ、意味ない行動なんてするわけないでしょ、この非常事態に」
「………」

集まったのはテンテン、キバ、赤丸、チョウジ、イノ、ヒナタ、私。六人と一匹。

「とりあえず現状を話す。聞いてくれ」

五人と一匹が見詰める中、私は事の次第を簡潔に話した。


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