非常時の采配
説明し終えると各々事態が飲み込めたようだった。本当の馬鹿がここにいなくてよかった。
「そんな事って…」
「砂はなんかキナ臭いとは思ってたけどよォ…」
「とにかく!ここは私達で何としても守らなくちゃ!」
テンテンがそう言うと皆が頷く。そこに私が待ったをかけた。
「その必要はない」
私の発した言葉に驚いたのか、テンテンがこちらを見る。途端人見知りが邪魔をしてなかなか口が動かない。緊急時にこんな下らない事で躊躇するなと己に叱咤した。
「この、水無月の結界でここは事足りる。それよりも里の民間人の救出を最優先すべきだと私は思う」
「戦う事よりも?」
イノの問いに静かに頷く。
「戦闘は上忍や中忍に任せておけば問題ない」
「なるほど…そういうわけね」
テンテンが納得した様子で笑った。
「戦闘に巻き込まれる事も想定に入れてツーマンセルが良いと思う」
「うん、その方がいいと僕も思う」
「同感。で、レイならそのツーマンセルの組合せも考えてあるんでしょ?」
「はぁっ!?お前シカちゃんみてーだな!」
「よーし!それなら頑張っちゃうんだから!」
「私も…出来ることがあるなら!」
面々の表情がとても頼もしく見えた。
「まず…キバとチョウジ。キバが感知タイプだから建物等に取り残されてる人々を見つけて安全な所まで運んで欲しい。瓦礫とか重いのを退かすには力持ちのチョウジが適任だろう」
「うっしゃ!いっちょやってやろーぜ!」
「ワンワンッ!」
「重いものなら任せて!」
「次に…イノとテンテン。二人は両親からはぐれた子供や非難場所が分からない者を誘導してくれ。避難先の安全確保、医療班の手助けも手が回るようならやってくれると有難い」
「わかったわ!出来る限りやってみる!」
「オッケー!子供をあやすのは得意よ!」
不安そうにこちらを見ている最後の一人に目を向ける。同時に写輪眼を出してヒナタのチャクラの流れを見た。
「ヒナタは残れ」
「っ!!!!」
「まだ怪我が完治してないだろ」
「うん…」
「私とここでここの人達を守って欲しい。それでも良いか?」
「う、うん!」
ヒナタが嬉しそうに頷いてくれたのでホッと一息つく。皆んなが通れるよう、結界に穴を開け片手を掲げた。
「散っ!!」
四人と一匹の無事を祈りながら目を閉じる。このやり取りを第三者に聞かれていたと知るのは後の話。
大名席では火影様の様子が伺えないので、向かいの観客席に移動した。ヒナタを空いていた観客席に座らせる。私はその隣に立ち翠玉眼を光らせた。
「レイちゃん…凄いね…」
その呟きはこの喧騒の中では聞き逃してしまう程の小ささだった。俯くヒナタの瞳は僅かに揺れている。
「凄いのは指示に従ってくれたお前らだ。それにあの采配は幼馴染を少し真似ただけにすぎない」
「ううん、レイちゃんも凄いよ。直ぐにあんな指示がだせるんだもん…それに…写輪眼も使えたなんて…」
あぁそうかと一人納得できた。他の皆は見えてないかも知れないが、ヒナタとは写輪眼の時に目が合ったのを思い出し、ヒナタに母がうちは一族の者だと教えた。
ヒナタは最初は驚いていたものの、嬉しそうに頬をほんのり赤く染めた。何かヒナタが嬉しがるような事を言っただろうか。
「何か変な事言ったか?」
「あっ!ううん、違うの!…ただ…レイちゃんって全然自分の事話してくれないから…何だか嬉しくて…」
「そうか」
和んでいたのもしていたのも束の間、張られていた四角い結界が解けていく。そして四人の忍びに抱えられながら大蛇丸が去って行くのが見えた。