合格の知らせ


キオさんとレイへ。少し用事が出来たので里を離れます。母さんがいなくなったからって泣いちゃダメよ?二人共、愛してるわ。

置き手紙にはそう記されていた。

母さんのこの書き方だと最後、否最期の一言としか読み取れない。父さんも父さんだ。ちゃんと大事な事は私に告げる事なく、勝手に行ってしまった。

あの慌て様からしてアテがあったのだろう。私だって探しに行きたいがお荷物になることはわかっている。

父さんと母さんは空が白み始めても帰ってくることはなかった。

▽▲▽


「レイ!レイってば!」

ハッと我に帰ると、視界一杯にイノの顔。

「すまない…」
「………」

チョウジやアスマ先生やシカマルも心配そうにこちらを見ている。今は早朝の任務中だというのに何を惚けていたのだろう。イノの手が肩に触れた。

「心配なのは分かるけど…私だって…木の葉の人達、皆心配してるわよ。でもあのキオさんだし!大丈夫よ!」
「そうそう、キオさんって凄く強いってボクのお父さんも言ってたし」
「つかキオさんが約束破るわけねーだろ。んな気にやむ事か?」

三人の言葉から暖かさを感じ、今朝から感じていた頭痛が軽くなった気がした。煙草を吹かしながらアスマ先生が私の頭を撫でる。

「ま、キオさんなら大丈夫だろ。なんたって元暗部、しかもカカシの先輩だしな」
「「「えっ?!?!」」」

何気なしに言われた事に私たち四人は目を見開いた。

「キオさんって暗部だったんだ…」
「詳しくはオレも知らねーけどレイが生まれてからは上忍に戻ったっつってたなぁ」

チョウジの言葉にアスマ先生が短くなった煙草を捨てながら言う。するとシカマルがポケットに両手を突っ込んだまま声を発した。

「確かキオさんって“木の葉の特攻隊長”…とか言われてたんじゃなかったか?」
「そうなのか?」
「確かオヤジが言ってたような…なかったような…」
「ったく!ハッキリしなさいよ!」
「ま、そんだけ強いって事だな。だからレイ、キオさんもコトさんも大丈夫だ」

アスマ先生が言うと何故か説得力があるのは何故だろう。皆の表情が和らいだ。

父さんが笑って戻ってくると言ったんだから大丈夫に決まってる。私は自分にそう言い聞かせて不安を胸の奥に押し込んだ。

▽▲▽


任務を終え解散したが、シカマルと私はアスマ先生に呼び止められた。そこで煙を吐き出されながら言われた一言。

「お前ら、今日から中忍な」
「「は?」」

もう一度アスマ先生に言われた言葉を脳内で噛み砕く。今日から中忍?なんの冗談だろうか、冗談にしてはタチが悪すぎる。

「里の上層部や各国の大名達の協議の結果、お前らが今回の中忍試験合格者になったんだよ」

説明を聞くも何だか実感が湧かない。そもそも、私は本選すら出来ていないのにどうなっているんだ。

「ちょ、マジかよ…めんどくせー…つか中忍試験は中止になったんじゃねーのかよ?しかもレイに至っては本選すら受けてねーのに…」
「ま、中忍試験は中止になろうが評価は変わらないって事だな。レイは大名達からの強い推薦があったらしいぞ?」

木の葉崩しの最中に私がイノ達に指示を出してんのを何人かの大名が聞いていたらしい。それが高く評価されたんだとか。

ズルしたような形で昇級する事になってしまい下忍の皆に申し訳なさを感じる。罪悪感で押しつぶされそうだ。

▽▲▽


アスマ先生はこの後任務が入っているらしく、この場を去った。去り際、「更新とか諸々は今日中にやっとけよ」と釘を刺された。私とシカマルはお互い顔を見合わせる。

「めんどくせー事になっちまったな、お互い」
「こんな形で中忍だなんて気分が悪い」
「だろーな…ま、レイの実力はもう全員分かってるだろうし文句言うやつはいねぇだろ」
「だが…」
「今更、決まった事をどうこう言っても変わらねぇよ。ほら、行くぞ」

頭をポンポンと軽く叩かれ、シカマルは先を歩き出した。私の頭は撫でやすい位置なのか…?と一人頭を捻らせてから後に続く。

「あ、そうだ」

シカマルの視線だけがこちらに向けられる。

「この事、帰ってきたキオさんとコトさんに知らせて驚かせてやろうぜ」

彼はニヤリと楽しげに笑う。私は思わず足を止めた。それと同時に嬉しさが込み上げる。一拍置いてから一歩踏み出した。


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