中忍ベスト
シカマルと私を抱え込む様にシカクさんが肩に腕を乗せた。
「おーーいシカマルよォ、あの人ぁ…この世で一番強く美しい女だぜー…なんせ“三忍”の紅一点だからなぁ」
シカクさんが私達から一旦離れると、シカマルは眉間に皺を作りつつ腕を組んだ。
「あーあ…女が火影かよ。レイ以外の女はどーも苦手なんだよな、ワガママで口うるさいしよ…みょーにさばさばしてる割にやたらつるむし、仲いいんだか悪いんだかよく分からねーし…大体、男が自分の思い通りになると思ってっからな。とにかくめんどくせーぜ女は…女が皆レイみてーなヤツだったらいいのによ」
「………」
シカクさんは何だか心当たりがあるらしく目を閉じて苦笑いしている。というか皆が私みたいだったらむしろ怖いと思う。
「シカマルよォ…女がいなきゃ男は生まれねーんだぜ。女がいなきゃ男はダメになっちまうもんなんだよ。どんなにキツイ女でもなー、ホレた男にゃ優しさを見せてくれるもんだ。お前も年頃になりゃ分かる」
「へえへえ」
「それとレイちゃんにしつこーくしてっといつか嫌われんぞ?」
「っ!!!」
私がシカマルを嫌う…?そんな事がありえるのだろうか…?
スタスタと先を歩くシカクさん。シカマルはバツの悪い顔を浮かべる。そしていつの間にか目の前からシカクさんがいなくなっていた。
浮かない顔をしているシカマルの腕を引く。
「シカマル」
「お、おう…」
シカマルは我に帰ったのかビクリと体を揺らした。
「どうかしたか?」
「いや…なんでもねェ…」
言葉とは裏腹に表情に影がある。あぁそう言う事か、とその仕草一つで全てを私は悟った。
「私がシカマルを嫌うわけないだろう」
シカマルは再び体を揺らす。彼ばかりが私のことを見透かせるわけではない。私だって彼の事なら大体分かるのだ。
「私はどんな事をしてもされても嫌わないし、嫌えない。私はシカマルの隣が何処よりも安心する」
「レイ…ったく、敵わねーなぁ」
シカマルはそう言いながらクシャリと笑う。先ほどの影は消えていた。私も吊られて頬が緩む。
「それにシカマルを嫌うなんて想像つかない」
「まーな…オレもレイを嫌うとか想像つかねーよ、つか想像したくもねーな」
「そうだな」
「めんどくせーけどそろそろ行くか」
「あぁ」
並んで忍者登録室に足を踏み入れた。
二人で忍者登録室を出たら丁度アスマ先生と出くわし、連れて来られた先は焼肉屋。ここは第10班行き付けの店だ。
アスマ先生、私、シカマルの順で座る。目の前に立ち上る煙を挟んで向かい側に座るのはニヤニヤした二人。
「へえー、いつもやる気の無いアンタでもちょっとはマトモに見えるわねー」
「ハハハ、似合ってない!」
「笑うなっての」
頬杖をついたシカマルは照れ臭そうだ。先ほど登録室で貰った中忍ベストが彼の凛々しさを際立てている。
「レイも着たらいいのに」
「そうそう、何で着ないの?」
痛いところを突かれ言葉に詰まる。イノとチョウジの言う通り、私は中忍ベストを着ていない。
「キオさんとコトさんに一番に見せたいんだと」
「シ、シカマルっ!!」
慌てて止めるが既に時遅し。両脇からも前からもニヤニヤとした視線を感じ、赤い顔を隠す様に俯いた。
「へえー、レイってばかーわいい!」
「レイはキオさんとコトさん、大好きだもんね」
「こりゃ、コトさんもキオさんも良い娘を持ったなぁ」
イノ、チョウジ、アスマ先生が口々に言う。ニヤついているシカマルを私は睨みつけた。ささやかな抵抗は彼にとって痛くも痒くもなかったようだけど。
「とりあえずシカマルとレイの中忍昇格を祝って、カンパイだな!」
「いただきまーす!」
アスマ先生のその一言を待ってましたと言わんばかりにチョウジが箸を持って勢い良く肉に食らいついた。当然非難の声が上がる。
「あ!チョウジ!カンパイ前に肉食べないの!!」
イノの叫びは焼肉に霧中なチョウジの耳には届かない。こうなってしまったチョウジは誰が何を言っても止まらない。
シカマルと目が合い、互いに苦笑いを漏らした。