写輪眼を持つ者


帰宅してからも私の頭は“暗部”の二文字で一杯だった。

綱手様の話によると本来は拒否する事は出来ないのだが異例として本人の選択権が認められた。理由としては大名達の中忍への推薦の圧力があったから。その返事の期限は三日後。

はあ、と深い溜息が無意識に漏れる。暗部に入る事は悪いとは思っていない。むしろ実力が評価されたのだから光栄な事だ。

ただ暗部に入ればシカマルや皆とはもう任務を共に出来ない。顔を合わせる事すら難しくなるだろう。

俯きそうになった時、こちらに急激に一つの気配が接近してきた。

▽▲▽


「よう」

庭の岩に影が降り立つ。月明かりが明るいせいで逆光になり、表情は読めない。

「…こんな夜分に何用だ…サスケ」

サスケは軽く跳躍し庭に足を付ける。そこで初めて彼がリュックを背負っている事に気づいた。

下忍がこんな時間に任務とは考えにくい。となると答えは必然と絞られてくる。

「オレと、勝負しろ」

脳内で憶測が飛び交う中、サスケは挑発的に口角を釣り上げた。

私が返事をする間もなくサスケが斬りかかって来る。咄嗟に大刀を抜刀し斬撃を防いだ。

この目の前で行われようとしている里への裏切り行為を止めるべきか、止めないべきか。普通に考えれば止めるの一択だ。

だが彼の写輪眼を見ていると気持ちが痛いほど伝わってくる。同じ写輪眼を持つ者同士、何か共鳴してしまっているのかもしれない。

後ろに跳んで間合いを取ろうとするが、サスケは離れた瞬間、素早く印を結んだ。

「火遁・豪火球の術―――!!!」

炎が引いてから翠玉結界を解く。地面を踏み切り大刀に手をかけた。サスケも写輪眼で私の行動は読めていたらしくクナイを二本構えている。

「抜刀術・第五星閃」
「っ!!」

胴、両脛、両腕、計五ヶ所を同時に峰打ちで捉える。胴は防がれたが他の箇所は手応えがあった。大刀を鞘に収めてうつ伏せに倒れたサスケに歩み寄る。

その時、背後に殺気を感じ、避けようと半身を翻す。しかし反応が遅れたため、脇腹に蹴りが直撃した。

「ぐっ…!」

吹っ飛ばされ、柳に背中を打ち付けてしまう。マトモに息が出来ない。息を整える暇もなくサスケからの次の攻撃が私を襲う。

何とか避け、間合いを取った。視界の端では先ほどサスケが倒れていた所に丸太が転がっている。

「てめェ、何の真似だ」

ジャリッと踏みしめる音と共に、サスケの這うような声が響いた。

今の攻撃、普段の私なら避けれたと言いたいのだろう。しかし手を抜いてるわけでもない、相手を侮っているわけでもない。それなのに体が思うように動かないのだ。

「暗部に誘われたって本当なのか?」
「何故それを!」
「チッ…カカシのヤローの話は本当だったのか…」

サスケの言葉の真意が分からない。

瞬時に間合いを詰められ押し倒される。抵抗はしようとすれば出来た。それでもしなかったのは彼の顔が余りにも悲痛に歪んでいたからだ。

写輪眼の中に写輪眼が映り込む。いつの間に写輪眼を出していたのか、それとも彼に引き出されたのか。

「レイ、てめェのその甘ったれた頭で暗部に入って何ができる…暗部がどんな場所かも知らねーくせに」

全く知らないと言うことはない。そう口を挟みたくなったがグッと堪えた。サスケは私の胸ぐらを掴んで顔を引き寄せる。今にも泣き出しそうな少年の顔が視界一杯に広がった。

「そんな所に行くくらいなら…オレと共に来い」

ゆっくりと目を見開く。口を開けども声にならない。

「お前はうちはの血を半分も受け継いでるってのにのうのうと生きるのか?身内がイタチに殺されてるという事実を知ってもなお平然としてられんのか?復讐が目的なのはオレだけじゃない、レイもだろうが」

確かにそうかもしれない。彼の言う通り母方の祖父母はイタチに殺されたのだろう。

ただ脳裏を過るのは大勢の笑顔。シカマル、イノ、チョウジ、アスマ先生、父さん、母さん、火影様…私はこの人達を裏切ってまでしたいとは思わない。

「興味ないな」
「は?」
「そんな事、興味ないと言ったんだ」

勢いよく起き上がり、間髪いれず懇親の蹴りを叩き込んだ。サスケは吹っ飛んだが直ぐに体制を整える。

「復讐が悪い事だとは思っていないが、里に仇なしてまで行わずともできるはずだ」
「…この平和ボケした里で何ができる、何が得られる!」

再び胸ぐらを掴まれたその時。

ピ―――――

辺りに笛の音が響き渡った。

「チッ…時間か…この勝負、今度会った時に片を付けてやる、覚悟しとけ」
「待て!サスケ!っ!!?」

走り出したサスケを追おうとするが、突然右腕が裂けるような痛みに襲われる。あまりの激痛に意識が遠のいていった。


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