守りたい場所
うちはイタチ。私にとって縁のない人物、そう思っていた。サスケの兄であり、うちはを滅ぼした大犯罪人。里を抜けた後の彼を知る者はほぼいない。知っているとしたら火影様や暗部、そして。
「自来也様、これはどういうことですか」
彼に向かって写真を突き出した。
「…おお、懐かしいのォ、アイツらの暗部の頃の写真か」
「知らばっくれないで頂きたい」
「彼が昔キオとコトと仲が良かった、それだけの話だ」
自来也様は相変わらず飄々としている。
暗部の慣れない任務をこなしながら合間を縫ってわざわざ出向いたというのに。これでは拉致があかない。
「母さんとの会話、忘れたとは言わせませんよ」
自来也様は双眼鏡から手を離した。ようやく話す気になってくれたようだ。
「やはり、聞いておったか」
自来也様が我が家にいらっしゃった時、「アイツが里の近くで目撃された」と母さんに報告していた。
「あの時言っていたアイツとは…うちはイタチの事ですよね?」
「………」
「彼はうちはである母さんを殺さなかった、何故か、ここ数日そればかり考えてました」
サスケの話からすると、彼が情けをかけたとは考えにくい。水無月家に嫁いだ母さんを忘れていたのでは、そう思っていた。しかし彼らは親交があった。それなら忘れるはずもない。
「父さんと母さんを殺したのは…うちはイタチですか?」
写真を握りしめる。自来也様は眉をはの字にして深くため息を吐いた。「もう少し大きくなるまで言うつもりはなかったんだがのォ…」と彼は空に向かってぼやく。雲の白さが際立つ空だ。
「断定は出来ん。ただ二人の間に何かあったのは事実だろう」
「じゃあ父さんも…」
「いや、キオが奴に負ける様なタマじゃあねーからのぉ。また別の第三者がいた、ワシはそいつを探してるところだ」
自来也様が分からないと言うなら仕方ない。彼の目は真剣そのもの。私を真実から遠ざけるために嘘をついているわけではなさそうだ。
写真を懐に閉まう。
「そうでしたか」
「…連れて行けとは言わないのか」
ピクリと眉が動いた。彼が言っているのは二ヶ月後に自来也様とナルトの旅の話をしているのだろう。自来也様がその旅の中でナルトを修行させながら情報収集を行うことを火影様から聞いている。
そりゃあ自来也様やナルトと共に行き、この手で探したい。それでも私には守りたい場所がここにある。暗部になった理由がここにある。
「ええ、そちらは自来也様にお任せします」
「ほう」
「私がついて行っても足手まといでしょうし…第一ナルトで手がいっぱいになると思いますよ。これ以上貴方様のお手を煩わせる様な真似はしません」
そう言うと自来也様は引きつった笑みを浮かべた。
「本当に中身はコトそっくりじゃのォ…」
グツグツ煮込むスープにお玉を入れて味を確かめた。思いのほかうまく出来ている。口角が自然と上がった。オーブンに入れたアップルパイは良い感じに焼きあがっているし、冷蔵庫の中にあるサラダもまずまずの仕上がりだ。
ピンポーンーーー
呼び鈴が鳴った。玄関の向こうではいつものようにお酒や料理、お菓子を抱えた彼らが騒がしく待っているのだろう。
手を拭いながら居間を横切る。その途中、傾いていた暗部の面を側にある写真立てに寄せ直した。写真の中で父さんと母さんが並んで笑っている。
「レイー!!早く開けて!腕ちぎれちゃう!」
「お腹ペコペコだよぉ…」
「親父達がうるせーから早くしてくれー」
玄関から聞こえた声に頬が緩んだ。
「今行く!」
完