失敗して強くなる
任務に失敗した。いや、それだと語弊がある。任務に失敗しそうになった。任務自体は遂行できたのだ。ただその内容がよろしくない。
任務中、暗殺目的の対象の子どもに情けをかけそうになってしまったのだ。その子どもに殺されそうになり、そこで初めて罠だと知った。死んだと思ったがテンゾウ先輩に間一髪で助けられ、今私は生きている。
情けないにもほどがある。あの温和なテンゾウ先輩にも厳しく注意されてしまった。他の先輩にも「油断するな」「女子どもだと思って甘く見るな」と何度も帰り道に言われたのが耳に残っている。
言い訳のようだが油断したつもりは全くなかった。ただ子どもだとどうしても刃が鈍ってしまう。この失敗はこれが初めてではない。だからテンゾウ先輩たちは怒ったのだ。いい加減にしろと。
家に帰る気にもなれず、近くの演習場で自主練をすることにした。
「ここにいたのね」
少し日が傾いた頃、カカシ先生が現れた。自主練を始めたのがまだ早朝だったためだいぶ長いこと体を動かしていたようだ。汗をぬぐって彼の元に駆け寄る。
「いやー探し回っちゃったよ、まさか演習場にいるとはね」
頭をかいて笑うカカシ先生。探し回った、とはどう言う事だろう。
「テンゾウから聞いたよ」
ギクリと体が固まった。何をとは言わないが内容はなんとなく分かる。十中八九、任務内容についてだろう。私は心苦しくなり俯いた。
「どうしても…ダメなんです」
声を振り絞る。そうしないと震えそうだった。視界に映る芝生を見つめる。
「テンゾウ先輩にはいつも迷惑かけて…頭では分かっているんです…ですが体が言う事を聞かず…」
ポンと頭に重さが乗っかった。カカシ先生の手だ。
「レイちゃんは真面目で優しいからね、だから最初反対した」
最初に暗部の話があった時の事を思い出す。たしかにカカシ先生は良い顔をしていなかった。
「……誰にでも失敗はあるもんだよ、それに…」
カカシ先生が私の頭を優しく撫でる。心地よくて少し目を細めた。どこか懐かしく感じてしまう。
「レイちゃんはレイちゃんのままで良いと思うよ」
「ですがそれだと任務が…」
「その心さえ失わなければだいじょーぶデショ」
見上げるとカカシ先生の笑顔があった。ストンと言葉が心に落ちる。
「さーて、イノかサクラのとこに行かなきゃね」
「え……」
途端にカカシ先生の笑顔が変わった。なんか怖い。咄嗟に離れようとするが手を掴まれてしまった。恐る恐る振り返る。そこにはさっきとは打って変わって胡散臭い笑顔を浮かべるカカシ先生がいた。
「テンゾウから脇腹怪我してんのも報告されてるんだよねー」
「……平気です……いっ?!」
「はい、ウソ」
脇腹を思いっきり突かれた。いや、そういう風にされたら怪我してなくとも痛いと思うのですが…とは言えない。
「レイちゃんさぁ、女の子なんだし傷はちゃんと直しときなさいよ」
「……めんどくさいです」
「シカマルみたいな事言うんじゃない」
そのまま私はカカシ先生に腕を引かれ、抵抗むなしく連行された。イノに怒られたのは言うまでもない。
「また怪我して!カカシ先生に連れてこられなかったらどうしてたわけ?!」
「まあまあ、イノ…レイちゃんも反省してる事だしそれくらいで…」
「カカシ先生は黙ってて!」
「……ハイ」
カカシ先生にまで飛び火が回ってしまうのは予想外だったけれども。
「ちょっと!レイ!聞いてる?!大体ねぇアンタはいつも!」
「あ!レイ!アンタまたやったの?!」
サクラが顔をのぞかせた。今日は色んな人から怒られる厄日らしい。その後二人によるお説教が小一時間続いた。
数日後、シカマルにまで話が回ってしまい彼にも怒られた事をここに追記しておく。