今日は今日で今日



海岸を出発してから数時間。一行がしばらく歩いていると断崖絶壁の崖に出た。ルルはクワガーモンに襲われた時の事を思い出し身震いする。そういえばあの時も崖だった。

「どうかしたのか、ルル」

異変に気付いたレオルモンが顔を覗き込んだ。どうにもルルの肩が気に入ったらしく、肩の上がお決まりとなりつつある。
ルルは小さく首を振って答えた。

「なんでもないよ」
「この辺で一旦休憩にするか!」

先頭を歩く太一が振り返と一同「賛成!」と声を上げる。
談笑しながらその場で休んでいると、唐突に何かのデジモンの唸り声が聞こえてきた。

「何っ!?」

空の声で皆振り返ると、現れたのはサイと恐竜の間を取ったようなデジモンが現れた。

「なんだ、あれは!」
「モノクロモンや。でも大人しいデジモンやさかい、心配せんでもええやろ」

テントモンが光子郎の質問に答えるが、そのモノクロモンはこちらに物々しいオーラを発しながら向かって来ているのも事実。

「そんなこと言ったってこっちに向かって来るぞ!」
「やだ〜〜!」

ルルは悲鳴を上げるミミを庇うように一歩前に出た。

「ルル…」
「お姉ちゃん大丈夫だから、ね」
「これのどこが大丈夫なのよ〜!」
「それは…大丈夫だよ、お姉ちゃんの事は私が守るから」

ミミはいつになく真剣なルルの横顔に黙らざるをえなかった。その様子を静かに見ていた人がいたとは二人とも知る由もない。
そうこうしている間にモノクロモンが二体になり挟み撃ちにされてしまう。

「みんな!逃げるぞー!」

太一の一声で全員一斉に駆け出した。近くの岩の影に隠れて様子を見るとモノクロモン同士が戦っていた。戦う理由はテントモン曰く縄張り争いらしい。

「今のうちに行きましょ!行きましょ!」
「待ってパルモン!自分だけ先に逃げないでよー!」

パルモンを皮切りにその崖から逃げ出す子供たち。しかし途中で足を止めた者がいた。

「逃げなくていいのか?ルル」

レオルモンが再び顔を覗き込むが肝心のルルはうつむいたままで表情がよく見えない。前を走る子供たちはそんなルルに気づいていないのかどんどん離れていく。レオルモンが交互に見ているとルルがぽそりと口を開いた。

「やっぱり自分の居場所によそ者が来たら追い出すよね」
「そりゃそーだ!自分の陣地は自分で守んなきゃだろ?」

なにを当り前なことをとでも言いたげにレオルモンが答える。するとルルは小さく呟いた。

「そっか、普通そうだよね」

何か含みがある言い方にレオルモンが問い質そうとした時、前方からヤマトがルルとレオルモンの名を呼んだ。ようやくいない事に気づいたらしい。

「ごめん、待たせて。行こうか」

走り出したルル1だったがレオルモンは首を傾げた。揺れる肩の上で思考を巡らす。
今の言葉に何の意味があったのか。そもそもルルは何故双子の姉であるミミを守る事に拘っているのか。
レオルモンは必死に考えたが小さな頭では限界があり、途中で諦めてしまった。

「まあいつか分かるだろーしな!」
「何が?」
「なーんでも!」
「変なレオルモン」

この笑顔を守れればそれで充分だ。


→→→


「もう疲れた…」

ミミは近くの木にもたれかかった。普段そんなに運動をしない彼女にとって休憩があるとはいえ、歩けるのはそろそろ限界に近い。
口々にミミを鼓舞するがどれも彼女の心に響いてはいなかった。

「もう少し頑張れよミミ」
「足が太くなっちゃう」
「太い方が良いんだよミミ。その方が体を支えるにも土を蹴るにも」
「あなたと一緒にしないで」
「そうよ!足っていうのは根っこみたいな方が素敵なの!」
「それもやだ」
「ええ…」

見かねたルルが彼女の近くに寄る。

「はい、これで最後だけどこれ食べて元気出して」
「ルル〜〜!」

ルルが持っていた最後のいちごミルク飴を渡すとミミはルルに抱き着いた。どうやら人に抱き着けるほどに気力は回復したようだ。
ルルもルルでしょうがないなあと言いながらもミミの面倒を見るのが嫌いじゃないらしい。近くにいたアグモン、パルモン、レオルモンはやれやれと顔を見合わせた。

そうしている間にテントモンが真水の湖を見つけ、そこで今晩は野宿することになった。
一同がそこに着くと思った以上の大きさの湖だった。その中で目を引くのは浮島のようなところにある電車。しかも車両一つ分しかない。
誰かいるのかもしれない。何かあるのかもしれない。動き出すかもしれない。そもそも何故このようなものがあるのだろう。
様々な思いを抱えた子供たちはそこへ駆け出した。着いたところでそれらの疑問や希望は打ち砕かれるだけに過ぎない。その反面、寝床を確保することができた。

「そろそろ飯にしまへんか」

テントモンの提案により分担して食料を集めることになった。
ミミとルルはというと植物に詳しいパルモンを伴ってキノコ狩りに行く事に決めた。

「このキノコは?」
「それは大丈夫!あー!ミミ!それはダメ!毒キノコー!」
「え?」
「これも食っていいのか?」
「それは焼かないと食べちゃダメー!」

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