勝負の鍵は腹事情



空が持っていたのは旅行用の救急セット及び絆創膏と消毒薬、針と糸。
光子郎が持っていたのはノートパソコン、デジカメ、携帯電話。
ルルが持っていたのはPHS、イチゴみるく味の飴一つ。
太一が持っていたのは単眼鏡のみ。
ヤマトも食べ物は持っていないとのこと。

希望は絶たれたかと思いきやタケルがリュック一杯のお菓子を持っていた。
更にミミはやたら大きなカバンからキャンプセットを次々と取り出し並べて見せる。本格的な品々に一同目を丸くした。

「折角キャンプに行くんだからパパの道具借りてきたの!内緒で!」

天真爛漫に答えるミミに皆呆気に取られてしまう。

「私がちゃんとお父さんに許可取ったってば…」
「さすがルル!それならじゃんじゃん使っても大丈夫ね!」

ただこの先のことを考えると彼女がこんだけの荷物を持っていたのは不幸中の幸いといったところか。

残るは丈の荷物のみ。太一が電話ボックスに目を走らせると信じられない物を彼は肩から下げていた。

「あ!あれ!非常食だ!」
「「えぇっ!?」」

全員で彼を見れば確かに“非常用”と書かれたバッグを彼は持っている。何故そんなものをと思ったら、非常食当番だったミミに渡すためだったらしい。なんという奇跡だろう。
この時ばかりはミミの無責任さに感謝した子供たちだった。

昼食を取るために皆円を描くように座ってまず話し合いを始める。
非常食の数は限られている。その為食べるのは人間だけ、デジモンは自分たちで調達するように。そうまとめていた丈の努力を水の泡にするかのように太一はアグモンに食べさせてしまったのだった。

「上手いか?アグモン!」
「うん!」
「だからそれは人間用!」
「いいじゃないか、ケチだなあ…」
「ダメ!!」

そんな二人のやり取りに周りは丈をなだめる他なかった。

その時。ピヨモンとレオルモンが立ち上がった。

「どうしたのピヨモン、レオルモン」
「「くる!」」

二匹が声を揃えて言った途端、突然砂浜から間欠泉のように水が噴き出し、次々と電話ボックスを破壊した。慌てて子供たちはその場を離れる。
砂浜に現れたのはシェルモンというヤドカリのようなデジモンだった。テントモンいわくここが奴の縄張りだったせいで怒っているらしい。

容赦なく攻撃してくるシェルモンに対し応戦するがまともに攻撃できたのはアグモンのみ。理由は明白、エネルギー補給ができているか否かの差だった。
もちろんルルも太一と違って丈の言いつけを守りレオルモンに非常食を与えていなかった。

「ごめんねレオルモン、無理させて」
「オレの方こそごめん…ルルを守れなくて…」

力なく言うレオルモンを優しく抱き上げると本当に悔しそうな顔をしていた。
何故そうまでして私を守ってくれようとするのか、ルルは未だに理解できないでいた。

戦えるのがアグモンしかいないと分かった太一は自らもシェルモンの前に躍り出た。しかし敵うはずもなく太一もアグモンもシェルモンに捉えられてしまう。その間にもシェルモンは水の攻撃で子供たちを崖に叩き付ける。
ルルは近くにいたミミともともと腕の中にいたレオルモンを抱え受け身を取る事しかできなかった。

絶体絶命。その時だった。アグモンと太一の持っていたあの機械が光り出し、アグモンがグレイモンに進化した。二度目の進化に太一も含め、皆驚きを隠せない。
その後、激闘の末グレイモンは見事勝利し、シェルモンは海の彼方へ飛ばされてしまった。

呆気に取られていると「ああ!電話が!」と丈が壊れた公衆電話に駆けよった。
そんな彼以外の子供たちは戦い終えた太一と合流し今後について話し始める。

いつでも戦ってもらえるようにデジモンには準備万端の状態でいてもらわなくてはならない事を再確認し、非常食を全て与える事になった。

「さあどんどん食べてね!」
「ちょっと一口…」
「お姉ちゃん?」
「…分かってるわよー」

非常食を囲む空とデジモン達の隙間を縫って伸ばされたミミの手は目ざとく見つけたルルにはじかれてしまう。
まるで漫才のようなやり取りにデジモン達や近くにいた空やタケルの笑いを誘った。

デジモン達が食べ終えると今度は今後について話し合う。

「ここにいる理由はなくなったな」
「あぁ」
「シェルモンも完全に倒したわけじゃありません。また襲って来る前にここから離れた方が良いと思います」
「たしかにな」

光子郎の言葉からルルは先ほど飛ばされて行ったシェルモンの姿を思い浮かべた。あのデジモンはあの成りで泳げるのだろうか。いや、海底を這って来るのかもしれない。と思考を巡らせていると丈が勢いよく立ち上がる。

「だったらやっぱりあの森にもどろうよ。僕らが最初にやって来た森だよ。あそこで助けを待とう!」

どうにも彼はあの森が安全だと思い込んでいるらしい。周囲は少々呆れ気味に反発した。

「前にも言ったけどあたし達は崖から落ちて川を下ったのよ?そう簡単には戻れないわ!」
「クワガーモンはイヤ!」
「もし別のクワガーモンが仲間の仇を取ろうと待ち構えていたらどうするんですか」
「ここに電話があったってことは誰か設置した人間がいるはずです!その人間を探した方がいいかもしれません」

女性陣の非難に加え、光子郎の画期的な提案に丈は黙り込むしかなかった。また、光子郎の意見がその場で採用され、彼は納得せざるを得なくなる。

「よーし!出発だー!」
「「おーっ!」」




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