なんやかんやありつつも腹が満たされた子供達。交代で見張りをしつつ電車の中で就寝することに。
ぽちゃん。揺れる波紋を見つめながらルルはまた小石を握った。投げれば新たな波紋が広がる。
なかなか寝付けなかったルルは気晴らしに湖畔へ出ていた。いつも一緒のミミやレオルモンは電車の中に残してきたため一人だ。
彼女が寝れない理由はただ一つ。昼間に見たモノクロモン同士の戦いが脳裏に焼き付いて離れないせいだ。
「なんでなんだろう…」
膝に顔を埋める。視界が黒に覆われた時、後ろから声をかけられた。
「寝れないのか」
振り返るとそこにいたのはヤマトだった。
「ヤマト先輩…」
二人は正課クラブの先輩後輩で元々親しい仲だった。
ヤマトとしては昼間から様子のおかしいルルに気づいて声をかけたのだが彼女は知る由もない。
ヤマトはルルの隣に腰を下ろす。
沈黙の中、遠くで見張り担当のアグモンと太一の声が聞こえる。
「それ、ハーモニカですか?」
「あ、ああこれか?」
ヤマトは片手に持っていたハーモニカを掲げた。じっとハーモニカを見つめるルルの目は心なしか輝いている。
ヤマトはそんなルルの様子に少し面食らう。ヤマトにとってルルのこんな表情は初めてだった。もしや興味があるのだろうか。
「…吹いてみるか…?」
途端、ルルはパァっと表情を明るくしたがすぐ首を振った。
「…いえ、大丈夫です」
やってみたいのかと思ったが違ったのだろうか。
しかしヤマトはルルの表情が曇っていることに気づいた。本当は…
ヤマトが口を開きかけた時。
「あ!ルル!ヤマトと一緒だったんだね」
ガブモンがやって来た。
ガブモン曰くレオルモンが帰りが遅いルルを心配しているらしい。そんなレオルモンの代わりにガブモンがルルを呼びに行く役を買って出たのだった。
「ガブモン、ありがとう。じゃあヤマト先輩、おやすみなさい」
そう言って去って行く後ろ姿を一人と一匹は見送る。
「アイツは…何も聞かないんだな」
「え?」
あまりにも小さな呟きにガブモンは聞き返すがヤマトは「何でもない」とはぐらかした。
聡いヤマトは太一たちがタケルとの仲を噂しているのに気づいていた。わざわざ答える義理もないと放置していたが、憶測が飛び交うのは気分の良いものではない。
先ほど太一に直接聞かれて答えたように、クラブでも特別可愛がっているルルに聞かれたら答えようと思っていた。しかしルルは一度も気にしたそぶりは見せなかった。
知り合った頃からヤマトは一々詮索してこないルルに好感を持っていて、だからこそ可愛がっていた。それが今は何故か寂しく感じるのは何故だろう。
ヤマトは小さくなる背中を静かに見送り続けた。
電車に戻るとレオルモンが一番に飛びついて来る。
「すぐ戻るって言っただろー!」
「静かに。皆んな起きちゃう」
レオルモンの大きな声を制するが、時すでに遅し。見渡すと空と光子郎がこちらを伺っていた。
「起こしてすみません」
「ううん、私もなかなか寝れなかったの」
「僕もです」
目を走らせるとミミやタケル、丈は夢の中だった。一安心し、ほっと息を吐く。
ルルは一通り見渡し、光子郎の隣で寝ることに決めた。
「隣、いい?」
「ど!どうぞ!」
「ありがとう」
目を閉じるとハーモニカの音が聞こえる。優しい音色に包まれ、ルルはようやく眠ることができた。
→→→
突然の揺れにルルは飛び起きた。他の子供達もこの揺れに気づき目を覚ましている。
「一体どうしたの?!」
「地震だわ!」
「やっぱり電車が動き出したんだ!」
混乱する中、ドアの近くにいた光子郎とテントモンはいち早く揺れの正体に気づいた。
「モンスターが出たんだ!」
「シードラモンや!」
ルルは窓から身を乗り出し様子を伺うと、湖から緑の竜のようなデジモンが見えた。
「とりあえず外に出よう!」
丈の掛け声で電車から全員出る。
見渡すと周りの景色が流れていた。陸と繋がっていたはずの島が動き出している。
「ミミ…」
無言で震えるミミの手を握る。
「私酔いそう…」
震えてはいるものの意外と能天気な事を言っている。案外肝は座ってるらしい。
未だシードラモンは怒り狂っている。どうやら太一とアグモンが何か仕出かしてしまったらしい。
デジモンたちが子供達を守ろうと攻撃をするが一向に効いている様子はない。
アグモンも進化しようとするが進化ができない。今はお腹が空いているわけでもないのにどうしてなのか。
「タケル!」
湖からの声に皆振り返る。
ヤマトがこちらに泳いで向かっているのに気づいたタケルが島の淵に駆け寄った。
「お兄ちゃん!」
その時、シードラモンの攻撃の衝撃でタケルが湖に落ちてしまう。急いでヤマトが近くに泳ぎつけるが、ゴマモンがタケルを助けてくれた。
しかしシードラモンは待ってくれない。攻撃をしようと構えるシードラモンがタケルを標的にしないよう、ヤマトは囮を買って出た。
「おい!シードラモン!こっちだ!」