潮風に身をゆだねていると遠くから電話の音が聞こえてきた。音は海岸から聞こえてくる。
子供たちは訝しく思いながらも行ってみることにした。
海岸に着くと目に飛び込んできたのは綺麗に並んだ電話ボックス。太一は思わず走って電話ボックスのドアを開けるが電話の音は止まってしまった。なんだったんだろう、何故なっていたのだろう。一同そろって首を傾げる。
「こんなところに電話ボックスなんて」
「不合理です!」
「でもこれはいつも見る電話ボックスだな普通の」
「あたしんちの近くにもあるわ」
口々に言うと丈は何かに気づいたのか声のトーンを上げた。
「という事はここは…ここはまだ日本なんだ!」
「二ホン?丈、なんだそれ」
心底不思議そうなゴマモンの言動に丈はがっくりと肩を落とすしかない。
「……やっぱり違うかも」
ルルは心の中で「ファイル島って名前からして日本じゃないと思う」とひとり呟くだけにとどめた。実際に言ってしまったらこの情けない先輩がさらに情けない姿になってしまうのが目に浮かぶ。
太一は電話ボックスのドアに手を置いて光子郎に手のひらを差し出した。
「光子郎、十円貸してくれよ」
「何するんですか?」
「決まってんだろ、電話かけんだよウチに」
その言葉を皮切りに子供たちはそれぞれの家に電話をかけようと電話ボックスに入って行った。この電話ボックスが人数分あったのは偶然か必然か。
「はい、テレカ」
小銭がないためルルに借りようと電話ボックスから半身出した状態のままミミは瞬きを繰り返した。彼女は釈然としないまま差し出されたテレカを受け取る。
「ルルはかけないの?」
「二人でかけても通じないでしょ、ならミミがかけた方が良い」
確かに同じ電話番号に二人同時にかけた場合、どちらかが無駄になるのは分かる。しかし後半の言葉にレオルモンは引っ掛かりを覚えた。
ミミは後半が聞こえていなかったのか、「そっか!」と納得した様子でテレカを公衆電話に差し込んでいた。
電話ボックスの外で待つルルにレオルモンは訝しんだ視線を送るが無視される。
「本当にいいのか?」
「かける必要ないよ、二人で一つだし」
嫌な視線に感づいたルルはさらりと受け流した。レオルモンは口にしないものの「なるほど、全くわかんねーぞ」と顔に書いているような表情を浮かべているのが見えて少し笑ってしまう。
「ねえルル、番号ってこれで合ってるよね…?間違っちゃったのかな…」
不安そうなミミの声に気づき、渡された受話器を耳に近づけると「明後日の天気は雨、後チョコレート」という意味不明なメッセージが流れてきた。
隣の電話ボックスを使っていたヤマトとタケルに確認を取っても同じように出鱈目な事しか聞こえてこなかったらしい。
悲しそうなミミを見ていると申し訳ない気持ちが込み上げてくる。ミミの為にも少しの可能性にかけたいとルルは再度受話器を取った。
数十分後、公衆電話の前で奮闘しているのは丈のみだった。さすがに皆どこにかけても通じないと悟ったのだが彼はなかなかに粘り強い。
終わりそうにないため丈の様子を見守りつつ各々休息をとる事になった。
「もう疲れた…歩きたくない…」
そうぼやくミミの手を取って座らせてやると彼女は膝を抱え込んで俯いてしまった。相当疲れているのが見て取れる。
その隣にルルも腰を下ろすと、途端にどっと疲れが押し寄せてきた。正直座らなければよかったと後悔する。もうこれじゃしばらく立てそうにない。
ふと顔を上げるとミミがいないルルの反対隣りにタケルが座り込んでいた。
「疲れた?」
努めて優しく声をかけるとタケルは小さく頷いた。
「そっか、そうだよね、二年生だもんね、偉いね、頑張ったね」
よしよしと帽子の上から撫でてやるとタケルは小さく何度も頷く。そうしていると今度は反対から視線を感じ、目線をやるとミミが恨めしそうにこっちを見ていた。
「お姉ちゃんもよく頑張りました」
軽く頭を撫でてやると満足げに笑顔を見せた。
「レオルモンも頑張ったね」
「オレは疲れてなんかねーぞ!」
耳元で騒ぐレオルモンがルルにとって頭痛の種になったのは言うまでもない。ただ労っただけだというのに。
そうこうしている間にここで本格的に休憩を取る事になった。
「誰か食べる物持ってる?あたしが持ってるのはこの…あれ?」
空がズボンのポッケに手を伸ばすとそこにはキャンプ場にいた時に空から降って来た小型の機械が付いていた。各々確認すると全員その変な機械は持ったままであることが分かった。
何か意味があるのかと考えようとしたものの皆空腹状態でまともに考えられるわけがない。再び食べ物を持っているか否かの話題に戻った。