シロクマの少年

練習終わりにお父さんに言われたコースをランニングしていると、河川敷に差し掛かり夕日が綺麗に見えた。あまり見ることのできなそうな色合いに目を奪われる。

ふと道の先に一人の少年の背中が見えた。その背中は小さくあまりにも頼りない。歩いている様子もないので迷子かと少年の肩に手をかけた。

「君、だいじょう…」

振り向いた彼は静かに涙を流していた。これにはギョッと手を引くしかない。本格的な迷子か?

「ま、迷子かな?」
「…違う」

少年は涙をぬぐいながらしゃがんでしまった。ふてくされたその横顔はだいぶ可愛らしい。
このまま放っといてもいいのだけれど、老婆心からか、何故か放って置けなかった。

「えーっと…あ、見て!お揃い!」

何とか機嫌を直してもらおうと話題を探すと、少年が着ているTシャツと私のTシャツがお揃いだと気がついた。

「君もしろくま好きなの…?」
「うん、カッコいいよね」

喉元まで「可愛い」と言いかけたがここは思い直すことに成功。男の子だしこう言ったほうが良さそうと判断した。
すると策がハマり、見事少年の注意を引くことができた。少年は静かに何度も頷く。瞳が少し輝いた。

「こっち座って一緒に夕日見ようよ」

河川敷の土手に腰を下ろし、隣を軽く叩く。少年は少し心を開いてくれたのか、素直に従ってくれた。

「悲しいことがあったの?私なら事情とか知らないし…言いたい事とか悩み事とか何でも言っちゃえば?」

少年は目を見開いている。まあ簡単に話してくれるとは思っていない。ただこの子が重荷に感じているものを少しでも楽にさせてやりたいと思った。

彼は最初は戸惑っていたものの、少しずつ話してくれた。皆んなの輪に入り辛い事、おじいさんにアドバイスを貰ったけどよく分からなかった事、特に仲の良い友達がいないけど親の転勤で北海道行きが決まり何故か悲しくなった事。

想像以上に色々と抱え込んでいて驚いた。話終わった彼の頭を優しく撫でてやる。

「だいじょーぶだいじょーぶ。そんな眉間にシワ寄せないの。そうそう、おじいさんのアドバイスはきっと分かる時が来るまで胸の奥にとっておきなさい」

ペラペラとよく回る口だこと。自分に呆れるくらいお節介が顔をのぞかせてしまった。少年は瞬きを繰り返している。やり過ぎたかもしれない。所詮見ず知らずの人間だし。

彼の肩越しに初老の男性が見えた。おそらく彼のおじいさんだろう。

「じゃ、もう行くね」

やっと今がロードワーク中である事を思い出した。やばい、早く帰らないと…今日はお父さんの帰宅が早いんだった。

走り出したものの、気になって振り返る。少年は少し嬉しそうにこちらに手を振ってくれた。少年の目はキラキラしていて、ただ眩しかった。