少年たちに混ざって野球をしていると、ますます母親のような気持ちになってしまう。
「すごいね、よく取れたね」とか「打つの上手いね!」とか。とにかく褒めて撫でくりまわしたくなる。あー可愛い。いや、別にショタコンではないけれど。
私のポジションはお父さんに仕込まれただけあって、ピッチャーかキャッチャーだ。女であることもあって最初は変な目で見られたものの、これまたお父さん仕込みのバッティングで黙らせた。今では普通にチームメイトとして扱ってくれる。
キャッチャーはあまりやりたい人がいないのかと思いきや、このチームには二人もやりたがる人がいた。しかもやる気が格段にあり、私はいつもキャッチャーマスクを譲ってしまう。
まあ、若者に譲りますよ。ポジション争いなんてしたらこれからの子達の夢を潰しかねない。
ただ監督の目は誤魔化せなかった。試合で出場する時、私の打順は常に四番。もう少しオーダーを動かしてもと進言したが、私の選球眼とバッティングセンスを大いに買ってくれていて聞き入れてもらえなかった。
学年が上がり、登板回数や投球回数も増えてきたころ。練習試合終わりに一つ年上のキャッチャー君に話しかけられた。
「なあ、お前なんでいつもヘラヘラ投げてんだよ」
ヘラヘラ?そんな風に投げているつもりはない。むしろ皆んなが楽しくプレーできるよう、勝てるよう努力しているつもりだ。少し母親の気分が混ざっているけど。
「すみません、真剣に投げてるつもりなんですけど…」
「そうじゃねぇ!投手ってもっとワガママなもんだろ!周りに気使いすぎなんすよ!」
もう一人の一つ年下のキャッチャーも怒鳴った。この子、注意するんだけど口が悪いんだよな…目力あって可愛いんだけど…あと学年にしては小柄だし可愛さ倍増だ。
パチリと瞬き一つ。いや…ワガママとか…どういうこと?そんなものないけど…それに周りに気を使うのってこの人生始まってから身についた癖だし…正直どうしようもない。
キャッチャー達に感化されたのか周りにいたチームメイトも口々に言い始めた。
「確かに!フライとったらありがとうっていちいち言うし!」
「眞白さん、打たれたらすぐ謝りますよね!」
「なんかよく褒めてくるし!」
「眞白って全然ピッチャーらしくねえよな!」
ピッチャーらしさ…って…なに?
曖昧に笑って答えるしかなかった私だが、彼らの言葉に大きく衝撃を受けた。
さらにダメ押しに年上キャッチャー君からこの一言。
「リードし甲斐がなさすぎんだよ」
いやいやいや、別にまだリトルだし、私直球しか投げないし、まあコントロールは良いから少し君が組み立ててくれてるのは知ってるけど、そんな風に言わなくても…
メラメラと私の中で何かが燃えるのを感じた。これはチームの士気の一大事かもしれない。やってやろうじゃないか。