ミニミーティング

月に一度、練習終わりに高島先生とプレハブでミニミーティングを行う。ミニミーティングというか私の集めた一ヶ月分のデータを吟味するというもの。

おそらく監督に見せるか否か彼女なりに見定めているのだろう。このサイクルがあるため気が抜けない。ただ量が半端ないので練習終わってから一度家に帰ってから持ってこなきゃいけないのは大分手間がかかるけど。

今日も今日とて重たいバインダーを大量に抱えてプレハブに入る。高島先生は先に来ていた。

「毎度すごい量ね」
「ええ、まあ」
「デジタルに切り替えるのはどう?」
「…機械苦手なので」
「それは残念」

クスクス笑われるが美人は何しても絵になる。綺麗な顔で微笑まれたら何でも許してしまいたくなるのだから恐ろしい。

バインダーを渡すと、代わりに紅茶の缶を貰った。春頃に好きなものを聞かれてからいつも彼女はこれを買っといてくれる。

いつものようにチビチビ飲みつつ横から口を挟む。

「吉川先輩の逆球、先月からだいぶ減りましたよ」
「このまま減るといいんだけど…」
「そうですね…彼は前科ありますから」
「伊佐敷君の悪球打ちは変わらずね…」
「彼は自ら打ってる節があるので…」
「どうしようもないわね…」

一通り彼女が目を通し終わる頃には缶が空になっていた。バインダーをしまっている時。

「そういえば成宮君と田之倉さんってイトコだったのね」

パチクリと瞬きを一つ。別に隠していたつもりはないが、特に誰かに行った覚えはない。「はい」ととりあえず答えた。

彼女いわく、鳴のスカウトに行った時に「青道」と口にした途端、「青道?!眞白んとこじゃん!ぜってー行かない!死んでも行くもんか!」と断られたらしい。なんと失礼なことか。

「鳴が大変申し訳ありませんでした…」
「投手にはあれくらいの負けん気は必要よ、気にしてないわ」
「はあ…」

この人も大分変わり者だ。
何で彼に嫌われているのか、御幸君から教えて貰った情報を交えてかくかくしかじか話す。

「珍しいじゃない、田之倉さんなら直ぐにでも誤解を解きそうなのに」

再び瞬きを一つ。彼女は私を買い被りすぎているとつくづく思う。マネージャーとしてスカウトされた時も思ったけど。

「親離れの良い機会ですから」
「…まるで我が子のようね」
「まあそんな物ですよ」

なんせ0歳から知っているのだ。歳が近いせいでオムツを替えるなどの経験はないが、近くで成長を見守って来た。絶交と言われるのは胸が痛むけどそろそろ親離れ子離れすべき時期。嫌われるくらいが丁度いい。

よいしょとバインダーを抱える。そろそろテツ君達の自主練が始まる頃だ。

「そうそう、明日千葉に気になる子が一人いるからスカウトに行くんだけど田之倉さんも来る?」

腕と足を組んで不敵に微笑む高島先生。背後で輝く月に劣らない笑顔に見惚れそうになる。

「遠慮しときます。選手たちの成長を1日でも見逃したくないので」

私が答えると彼女は満足そうに一層笑った。