「あ、そうだ、舞お姉ちゃんと澪お姉ちゃんにおさがりありがとうって言っといてよ」
「えー?眞白が直接言えばいいじゃん。最近全然オレん家来なくない?母さんも寂しがってたよ?」
パシンと小気味良い音が我が家の無駄に広い庭に響いた。めいちゃんもキャッチボール上手くなったなあとしみじみしてしまう。少し前までキャッチの時目をつぶってたのに…
めいちゃんは私が野球を始めたと知るや否や後を追うように野球を始めた。才能があるのか、センスが良いのか、メキメキと上達し、今ではリトルチームのエースナンバーを背負っている。
「じゃあ今度行こうかな。ついでにめいちゃんの試合も見てみたいし」
その何気ない一言がめいちゃんには突き刺さったらしい。
目を輝かせ、ずいっと近寄って来た。距離感がおかしい。
「ほんとっ?!本当に見に来てくれんの?!」
「もちろん」
そりゃあ可愛い従兄弟の雄姿を見たいに決まってる。息子の発表会を見に行く感覚なのは一応黙っておこう。感動して泣きそうになるかも。
そんな話をした翌週、リトルの大会が始まり初戦でめいちゃんのチームと当たってしまった。見に行く以前の問題である。
結果、私ではなく彼が泣くことになってしまった。
その試合で私は四打数三安打、ノーヒットノーラン。完璧すぎた。まあ…めいちゃん、少し天狗になってたみたいだし、チームメイトを大切にしていなかったし…この試合は教育の一環だ。
ただ本人にそんな事を伝えられるはずもない。見に来ていた舞お姉ちゃんと澪お姉ちゃんは褒めてくれたけど、試合が終わってからめいちゃんは泣きじゃくってまともに話してくれなかった。
お互いのチームのミーティングが始まる前に何か言おうと側に来て見たものの、これではどうしようもない。
「ほら鳴、眞白ちゃん来てくれたよ?いいの?」
「いい!こっちくんな!」
「ちょっと鳴、そんな言い方はないんじゃないの?八つ当たりしないの」
「めいちゃん…」
お姉ちゃん達に挟まれ泣きじゃくる姿に多少申し訳なさを感じた。まあ…これも今後のためだ。
野球帽の上から頭を撫でようと手を伸ばすと振り払われてしまった。
「めいちゃんって呼ぶな!」
そう叫んでまた泣き始めてしまう。
向こうで監督が私を呼んでいるのが聞こえた。伸一郎君も怒鳴ってるしもう行かなくては。
「鳴、またね!」
「え…?」
呼び捨てで呼べば驚きで涙が止まっていた。良かった良かった。やっぱり小学校高学年になってまで"めいちゃん"って呼ばれんの気にしてたんだな。
私は手を振って監督とチームメイトの元に駆け出した。