男心が分からない

「眞白ってなんで髪伸ばさないの?きっと伸ばしたら可愛いのに」

バットを振っていたら縁側で座っていた鳴がそう言った。私の家の冷凍庫にあったソーダバーを我が物顔で食べている。それ、お父さんのなんだけどな…

今日は成宮家(父親以外)がご飯を作りに遊びに来てくれた。おそらく最近、お父さんの帰りが遅い事を知っていて心配して来てくれたのだろう。

「別に…邪魔だし」

私、顔良いから髪短くても男に見えないし、ショートでも十分可愛いし…とは口には出さないけど。

「女子力低いなー!オレの彼女なんてめっちゃ可愛いよ?髪ふわふわだし!小さいし!女子力高いし!」
「へー、鳴、彼女いるんだ」
「もちろん!オレってモテモテなんだよ?知らないの?」

知ってるも知らないも、そりゃそうでしょ。上二人がとんでもなく美人なんだしどう考えてもイケメンに育つに決まってる。
それに女に囲まれて育ったから女慣れもしている。女にだらし無くならなければいいけど。

「眞白、手見して」
「ん?」

バットを離し、近寄って来た鳴に向けて両手を差し出した。鳴は食べ終わったアイス棒を咥えたまま顔をしかめる。

「うっわ、汚いなーこれ女子の手じゃなくない?」
「仕方ないでしょ、それに鳴も変わんなくない?」
「そうだけど!オレは男だし良いの!眞白は女子じゃん!」
「何ムキになってんの鳴」
「ムキになんかなってない!」

むくれる横顔は昔から変わらない。なんとなく言いたいことを察してしまい、私はため息を吐いた。

「鳴さ、私が野球やってんの気にくわないんでしょ」

図星なのか鳴はギクリと固まった。君の考えていることなんて百発百中分かるからね、いつから面倒見てると思ってるの。

ただ鳴は女が野球をやる事に文句を言っているんじゃない。私が、やっているのが気にくわないんだ。

「そうじゃ…なくもない…でもない…」
「どっちよ」

「ご飯できたよー!鳴!眞白ちゃん!座ってー!」

澪お姉ちゃんの声が庭まで届く。私は直ぐバットやバッティンググローブを片付け始めた。今日の夜ご飯、なんだろなー。

「眞白は…シニア行かないよね…?」
「へ?」
「行かないなら!オレのチームでマネージャーとかやらない?!うん!それいい!オレ天才!」

目を輝かせる鳴には悪いけど…

最初はお父さんを立ち直らせるために始めた野球だった。それでも野球を続けたくなった。チームメイトの子達の成長を近くで見届けたくなった。

「いや、シニア行くけど?」
「……は?」

鳴、顔怖いよ。