リトルの夏大が始まった。夏は暑いし汗すごいし、マウンドに立つとホームが遠く感じる。蜃気楼が見える時もある。
ピッチャーというポジションは責任感が一番重い。チームメイト全員の夢が託されてるのだから尚更である。
初戦からテツ君とマサ君は応援に来てくれるらしい。マサ君は同じリトルとは言え、部門が違うので私と同じ大会には出場できない。
少年たちの父兄も応援に力が入っている。それもそうだ、去年は準優勝、今年こそという気持ちがあるのだろう。
その期待に応えたい。この子たちに夢を見させてやりたい。その一心で白球を投げ続けた。
「シロってマウンドだと別人だな」
「そう?」
「打者の時は律儀だ」
テツ君とマサ君に祝われながらドリンクを飲む。今日の試合は勝てた。
他の子達も親御さんに褒められて嬉しそうだ。
「ミーティングするぞー!集まれ!」
監督が声をかけるとワラワラと集まる。勝ったため、ミーティングはあっという間に終わった。色々ミスはあったけど小学生はまず野球を楽しむことが第一。
解散になった時、丁度隣にいた伸一郎君を小突いた。
「ナイスリード!伸一郎君」
「…マウンド降りると迫力ねーんだよな…」
「あのねえ…」
この子、相変わらず口が悪い。小柄だしキャンキャン吠えるチワワみたい。
そう思っていると伸一郎君はふいっと顔を逸らして呟いた。
「伸一郎…で良い…」
「え?」
「呼び捨てで良いっつってんだよ!年下に君とか付けんじゃねえ!マウンドからそう呼ばれると気ィ抜けんだよ!」
ああ、そういう事。少し赤面する彼はやっぱり可愛い。決してショタコンではない。
「じゃあ伸一郎、次の試合もよろしくね」
「……おう」
その後、その様子を見ていたテツ君とマサ君が不機嫌になってしまい、ご機嫌取りに苦労した。母親とられた子供の気持ちなんだろう。
「あだ名で呼んでるの二人だけなんだけど…それでも名前呼びが良い?」
激しく首を振る兄弟。やっぱりまだ小学生だな。ちょろいもんだ。
「いつもありがとね、眞白ちゃん」
「いえ、テツ君のお母さんもわざわざ見に来てくださってありがとうございました」
「いつもながら礼儀正しいのよねー眞白ちゃんは。哲也と将司も見習いなさい」
「「………」」
「無視しないの」
この兄弟、都合が悪くなると無視する癖がある。そこが可愛いんだけど。
テツ君達は嬉しいことに次の試合も見に来てくれるらしい。夏休み中なのに申し訳ない。
家に帰ると留守電が入っていた。相手は鳴から。鳴も勝ったとのこと。
あの子今年からこの部門なのにマウンド上がってるんだから凄い才能の持ち主だ。