今日は放課後、めいちゃん家に遊びに来た。夜ご飯をご馳走してくれるらしい。お母さんとめいちゃんのお母さんが台所で楽しそうにしているのを横目に私とめいちゃんは近所の公園に来ていた。
舞お姉ちゃんと澪お姉ちゃんはそれぞれ部活で帰りが遅いらしい。
めいちゃんの機嫌を取りつつ遊具で遊んでいると、公園に一人の男が入って来た。めいちゃんは気づいていないようで楽しそうにブランコを漕いでいる。
「眞白!どっちが高くこげるか勝負!」
ちょっと待て、今それどころじゃないから。
周りを見渡しても人気がなく、閑静な住宅街特有の静けさ。男は公園に入ってからずっと私とめいちゃんを見ている。
また変質者か、と私は思わず顔をしかめた。二度目の人生で変質者に声をかけられたり、露出狂に出くわした数は数知れず。お母さんが一緒でも構いやしない。むしろお母さんも標的なのではないだろうか。
「お、お嬢ちゃん達、お、お母さんは一緒じゃないのかな?」
話しかけて来た…この手のタイプは見てるだけかと思ったのに。
めいちゃんは目をまん丸くしてキョトンとしている。うん、可愛い。じゃなくて。
「すぐ戻ってくるよ」
「違うよ!今日は眞白と二人で来たじゃん!」
余計なことを…チッと小さく舌打ちをする。
男は一歩近づいて来た。
「そ、そうなんだ…な、なら、お、おじさんと遊ばない…?」
「遊びません」
めいちゃんをブランコから降ろし、後ろに庇う。めいちゃんも様子がおかしい事に気がつき私のTシャツを握って来た。うん、可愛い。じゃなくて。
「な、ならおじさんと気持ちいいことしない…?」
「しません」
ここに長居は不要、めいちゃんの手を引いて公園を出ようとするものの男は追ってくる。
交番は少し先だし子供の足じゃ振り切れない。そう判断した私は振り返り男を見上げた。
中肉中背、黒い帽子に茶のパーカーに灰色のズボン。表情は焦点が合っていないわけでもなく、理性を失っている様子はない。
「おじさん、私のお父さん、ヤクザの偉い人だからこれ以上何かしたら死ぬより怖い目に合うけどいいの?」
美少女がガン飛ばした所で怖くないだろうけどとりあえずやってみた。
一瞬男の体が強張ったのを見逃さずめいちゃんの手を引いて走り出す。交番に駆け込んで一通り話し、家に連絡してもらった。
迎えを待っている間、めいちゃんと並んで座る。
「めいちゃん」
極力声を柔らかく、そう意識して声をかけると、めいちゃんの目に涙が溢れた。小学一年生には刺激が強すぎたかも知れない。
「眞白…」
「ごめんね、怖かったね、もう大丈夫だよ」
めいちゃんが泣き止むまで私はめいちゃんの頭を優しく撫で続けた。