コインを入れてバッターボックスに入る。バットを構えて待つとマシーンから白球が飛び出してきた。素早くバットを振ると心地よい音を立ててボールはホームランと書かれた的へ。
その時、ふと後ろから懐かしい声がした。
「相変わらず嫌味なほどフォーム綺麗スね」
思わず振り返る。するとリトルの後輩、枡伸一郎がバットを持って立っていた。
「伸一郎!」
「眞白さん前前!」
「うわっ」
次の球が発射されていたため反射的にバットを振る。また綺麗な音と共にホームランの的に当たった。「今ので打てるとか尚更ムカつく…」と後ろから呟かれたのは聞こえなかったことにする。
「ちょっとそこで待ってて!」
「ッス」
なんだか後輩らしい返事の仕方がくすぐったく感じた。少し見ない内に背が伸びたように見える。
バッティングセンター内のベンチに並んで座る。ここに来る前、買ったペットボトル2本の片方を手渡すと伸一郎はかしこまって礼を言った。
「伸一郎、いつの間に敬語覚えたの?」
「いや、別にこれは…」
彼は途端に表情を暗くした。静かに待っているとポツリポツリと話し出す。
「眞白さんが卒業してから…前みたく勝てなくなって…それでアンタの存在のデカさっつーかスゴさを知ったっつーか…」
私がいたリトルが最近、負け続きなのは風の噂で聞いていた。どこかで顔を出せればと思っていた矢先、彼に会えたのは運命の悪戯だろうか。
「だいじょーぶだいじょーぶ」
「なんスかその気の抜けた声は」
「伸一郎、肩の力入りすぎる事多いしそんな深く考えないの」
「でも」
「新チームなんだから当たり前でしょ?そうじゃなかったら逆にへこむんだけど。私たちいなくても平気だったのかーって」
黙り込む彼の頭を軽く叩く。こうやって相談してもらえるのも同じ目線だからだろうか。
「だいじょーぶ、君達が頑張ってるのは監督も私もちゃんと分かってるし努力は裏切らないから、結果は後から付いてくるよ」
にっこり笑って俯く彼の顔を持ち上げる。
「それにシニアに上がってきたら嫌でも私と組むことになると思うから覚悟しといてよ?」
正捕手は雅功だろうし、私はエースになれないし、伸一郎が上がってきたら彼と組むことが多くなるに違いない。
「あ…それなんスけど…」
「ん?」
「オレ、来年度から引っ越すことになって別のシニアに行くと思います」
「………え?」