子犬の喧嘩

シニアの夏大が始まった。初戦はなんと高平シニアという強い所だったが、なんとか勝つ事ができた。私の出番はスクイズのみ。まあ、何もいうまい。

次の対戦相手は鳴か御幸君のチームと当たることになる。正直、手の内を知っている御幸君のチームが勝ち上がってきてくれた方がやりやすい。順当に行けば鳴のチームが勝つだろうが野球は何があるか分からないから面白い。

鳴のチームを見るためにも今日はチームの皆と一緒に観戦に来た。

二回表、御幸君の1打席目。鳴はまだ投げておらず三年生の男の子が投げた。結果は空振り三振。まあ三年生の球って早いもんね。

その裏、御幸君は守備で良いところを見せた。何と盗塁を刺したのだ。雅功に負けず劣らず惚れ惚れするほど良い肩している。

「眞白はどっちを応援してんだ」
「んー、やっぱ対戦した事ない方かな。その方が攻略しがいあるでしょ」
「………珍しくやる気だな」
「私はいつもやる気に満ち溢れてますけど」
「どうだか」

四回から鳴が投げ始めた。ブルペンに入っていた時から思っていたけど、球速いし軸がしっかりしている。フォームも綺麗だ。こんな球を投げれるなんて少し驚いた。

「コイツ、なんか眞白に似てんな」
「だって従兄弟だもの」
「道理で。フォームがよく似てる」

四回表、御幸君の2打席目。得点圏にランナーがいる絶好のチャンス。空振り三振の姿が脳裏をよぎったが、彼は見事三塁手の横を抜けるヒットを放ち打点が一つついた。

マウンド上の鳴はとても悔しそうだ。対して一塁にいる御幸君は悪い顔をしている。あれは狙って打ったな。

「眞白が悔しがったらあんな風になんのか」
「私は打たれませんけど?」
「……マウンドじゃねぇのにスイッチ入ってねぇか?」

その裏、鳴の1打席目。結果見事な空振り三振。あの子、ピッチングばかりであまりバット振ってなかったから打撃はイマイチなのか。

その後試合は進み、鳴のチームが駒を進める事になる。


雅功たちと現地解散をした後、会場の外で待つ。鳴と約束した場所で待っていると何故か御幸君がやって来た。

「お疲れ様」
「あざっす…まあ負けましたけどね」

少し落ち込んでいるのが目に見えてわかる。思わず彼の頭を野球帽越しに軽く叩いた。

「全体的に打ててなかったけど御幸君のリードは悪くなかったと思うよ。一年生なのに物怖じせず三年生リードするの大変だろうし」

また顔を真っ赤にしてしまうのかと思いきや、御幸君はポカンとした表情を浮かべている。はて、的外れな事を言っただろうか。

その時。

「あーーっ!!!一也!やっぱりお前オレの携帯見てたな!」
「やべ」

遠くから鳴が叫びながら駆け寄って来た。なんか怒ってる。

「ちょっと!眞白!誰振り構わず頭触るのやめなよっていつも言ってるじゃん!勘違いされたらどーすんの?!」
「そう言う鳴もよくやられてんじゃねーか」
「オレはいいの!!!」

理不尽。御幸君と鳴が言い合うのを微笑ましく眺めているとまた鳴に一喝された。理不尽。