いつもと逆も悪くない

鳴のチームとの試合で私はシニア初登板した。投げたのは三回から五回までの打者一巡分。
こんなに出してもらえるとは思っていなかった。しかしその間、相手チームの投手は鳴。まあそういうことだ。

打席は二打席二安打。
被さると監督に注意されるが鳴の打席は必ず被さった。そうすると鳴は必ずアウトハイのストレートを押してくる。そこを狙えば下手にスピードが出ているため二塁打は手堅い。
ただ手が痺れて投球に影響がないとは言い切れない。それでも打ちたくなるのは監督が私に期待をしているから。テツ君とマサ君が見に来てくれているから。御幸君がデータを取っているから。

投球は三者凡退三連続。
打ち取られた時、鳴とてつもなく悔しそうだった。あははごめんね。

どちらを取っても出来過ぎな程、完璧に仕事を終えた。ただ打者二巡目になっていたら簡単に打たれていただろう。私の球は特別速いわけでもない。

結果、私のチームがチャンスを掴みきれず僅差で負けた。鳴のチーム、下位打線も結構打つし完璧に打線で負けたも同然。
それを雅功も理解したのか帰る時、私が毎日何回振っているか聞いて来た。よほど鳴から打てなかったのが悔しかったらしい。

「鳴の時以外では四番の仕事出来てたよ?」
「うるせぇ…その鳴とやらの時に四番の仕事横取りしたのはどこのどいつだ」
「いたいいたい」

頭ぐりぐりはやめて欲しい。
雅功の腕の中から抜け出そうともがくものの、身長が伸びた彼から逃げるのは苦難の仕業になってきた。165cm超えてきたんじゃないだろうか。子供の成長って早いなあ。

「雅功も大きくなったよね…」
「は?」


家に帰って携帯を確認すると着信が18件、メールが8件。その内、着信全て、メール6件は鳴から。あの子何してんだ。おそらく勝った事の自慢が9割、励まし1割だろう。

そして結城兄弟からは郵便受けにメモが入っていた。マサ君からは
「かっこよかった」
の一言。学年が上がるごとに寡黙さが増した彼らしい。テツ君は
「さすがシロ、お疲れ様」
とのこと。
それにしても君達、ちゃんと自分の名前書きなさいよ。私じゃなかったら誰が書いたのかわかんないでしょうが。

次はメールを確認する。まず御幸君。
「眞白さんの腕が落ちてなくて安心しました。お疲れ様でした。」
どこ目線だこのガキ。おっと口が悪くなってしまった。やっぱりなんか生意気さが増したな…いや生意気で可愛いけど。

次は伸一郎。あれ、あの子見にきてたのか。
「お疲れ様です。見に行きました。相変わらずで何よりです。」
不甲斐ないところ見せなくて良かったと心底思う。あの子の家から球場まで近くないだろうに…といってももう中学一年生か…

最後は鳴。…これは明日にしよう。

携帯を閉じて私はバットを握りしめた。