試合の翌日はオフ。そのためお父さんから言われたメニューをこなし、昼間はせっせとデータ集めをやる事にした。
そろそろ昼飯にするかと立ち上がった時、呼び鈴が鳴った。
インターフォンを覗くと知らない女性が一人。うん、美人。じゃなくて。
玄関を開けるとメガネ美人は深々とお辞儀した。
「初めまして、私青道高校の者です。田之倉眞白さんにお話があって参りました」
顔を上げた彼女は意志の強そうな瞳が印象的だった。
居間に招きお茶とお茶菓子を出す。良かった、昨日和三盆のお菓子食べ切らなくて。
この目の前に座るメガネ美人は青道高校次期野球部副部長の高島礼さんというらしい。美人すぎて女の私でもドギマギしてしまう。
ただ、こないだの試合を見て、私のピッチングとバッティングのフォームから直ぐに野球選手の父とつながったと言っていたから相当なキレ者である。
「田之倉さんは今中学二年生よね?」
「はい」
そう答えると彼女はホッと息を吐いた。…何か学年の件で問題でも起こしたことがあるのだろうか。まあそんな事はどうでもいい。
「来年受験する学校は決めてるのかしら」
「いえ」
「ならウチを受けない?多分貴女の学力なら問題なく来れると思うわ」
この人のサーチ能力侮れない。どこからそんな情報仕入れたの……
きっと監督だ…うちの監督も美人に弱いからなあ…
「それに貴女のお父さん、田之倉選手の母校でもあるし…野球部のマネージャーとして私は貴女を迎え入れたいの」
お茶を一口飲んで一息つく。
「私を必要として頂けるのは嬉しいですが、そこまでの評価を頂けるほどの人間ではありません」
そう、この人は私を過大評価しすぎだ。鳴を打ち取れたのもバックあってこそ。それに幼い頃から知っているし行動パターンが読めるだけ。
「高校からはプレーヤーとしてではなくマネージャーとして選手を支えたいとは思っていますが、期待されるほどのスキルはありません」
彼女はカチャリとメガネを片手で直した。こういう事本当にする人いるんだ。
「こないだの試合中、見ていたノート見せてもらえないかしら」
あー、あれか。丁度さっきまでデータをまとめていたため、直ぐに取り出すことが出来た。彼女にノートを渡すと隅から隅まで目を通し始めた。
「ここまでとは…」
「それは父に仕込まれたデータ術ですけど…」
「やはり、貴女はウチのチームを強くするのに絶対不可欠な存在ね」
笑顔を浮かべた美人は私の大好物なのに、その時は何故か彼女が肉食獣のように見えた。