今日は練習試合。
相手のチームの要はエースで四番の財前君だろう。見た目は少し伊佐敷君に似ている気がする。
挨拶する時、わざわざ目の前に並ばれた。こちらを見る視線は明らかに見下している。
「女がいるチームなんざ負ける気がしねーなぁ」
言われた言葉は大して珍しい物でもない。
私は隣にいた雅功を片手で抑え、口角を上げて睨みつける。雅功もそんなカッカしないの。
何も言わずにベンチに戻る。
「絶対負けるワケにはいかねぇぞ」
「なんで雅功がイラついてんの、ほら落ち着いて。ネクスト入り忘れないでよ?」
「忘れねぇよ!馬鹿か!」
ほら、四番が頭に血が上らせてると周りも影響されてしまった。メラメラと燃え上がる闘志が見える様だ。
「小太郎も、落ち着いて」
「落ち着いてられるかよ!このチームで一番努力してんのは眞白だろうが!」
怒鳴る小太郎に思わず吹き出してしまう。そんな私を見てチームメイトは拍子抜けた表情を浮かべた。
なんだ、とっくに認められていたのか。いつまでも仲間じゃないと肩肘張って意固地になっていたのは私の方だったのかもしれない。
彼との勝負は六回表。代打で送られた。雅功は打ててるのに何故指名されたのか分からない。監督を見ると静かに頷かれた。
言われた分、清算してこいってことだろうか。
「やっと出て来やかだったなテメェ!」
マウンドで叫ぶ財前君に私は答えることなく素振りをしてから一礼する。
「お願いします」
バッターボックスに入り、内野と外野の守備位置を見た。極端な前進守備。ははは、舐められてるなあ。
初球。危ないと思った時には遅かった。後ろに仰け反ったものの、球が右肩に直撃。デッドボールって思った以上に痛い。
衝撃で地面に転がったまま右肩を抑える。
「眞白!!!大丈夫か?!」
真っ先に駆けつけてきたのは雅功だった。はは、そんな怖い顔しないの。
「あの野郎…!狙って…」
「雅功!落ち着いて!」
「チッ動くんじゃねぇ!」
「平気だから、心配し過ぎ」
雅功にチョップを与える。少し頭冷やしなさい。
ちらりとマウンドを見ると頭を下げているようだがあんまり反省はしてなさそうだ。
「ちょっと雅功、コールドスプレーは…?」
「ねぇよ!」
「忘れて威張らないの」
後から寄って来たチームメイトの一人からコールドスプレーを受け取った。寄ってきた子達全員顔が強張ってる。
「皆んな顔怖いよ!痛くないって言ったら嘘だけど、運がいいことに今日は私投げないんだから!切り替えて!」
パンと手を打って解散させた。審判の人に無事である事を伝え一塁に向かう。雅功とすれ違う時。
「私の分も頼んだよ」
彼の肩をポンと軽く打って駆け出す。一塁でガードを外していると雅功がバッターボックス前で吼えていた。
気合い入り過ぎてないと良いけど。そんな杞憂は無駄に終わり、雅功がホームランを打った。
塁を回ってベース付近で雅功を待つ。ベースを踏んだ彼と力強くハイタッチを交わした。ちょっと痛いくらいだ。
その後、順当に試合が進み、私達のチームが勝利した。
「舐めた口聞いてるからああいうプレーしかできねぇんだよ、ざまぁねぇぜ」
「だから雅功、そんなカッカしないの」
「うるせえ!お前は俺の母親か?!」
違いない。とは言わないけど。