「俺のスーパーバズーカお見舞いしてやんぜ!」
練習試合前、豪快に笑う男の子がいた。元気だなあ。
微笑ましくてつい眺めているとガン飛ばされた。「見てんじゃねえ」と、そういう事ですね。虚勢をはるポメラニアンのようでその姿すら可愛く見えてしまうから重症かもしれない。
「ヘラヘラしてんじゃねえぞ」
「雅功は少し肩の力を抜いた方が良いと思うよ」
「テメェは抜きすぎなんだよ」
そんなことない。可愛いなあと思って癒されているだけである。
試合開始。よく吠えるポメラニアン君はなんと投手だった。しかも打席は四番。
マウンド上でまた何か吠えていた。元気が有り余っているんだろう。オーダー表によると彼の名前は伊佐敷純君というらしい。
球は速いものの制球が定まらずボールになる事が多かった。チームの何人かはその速いボールで振らされてアウトになってしまう。しかも荒れているためマトを絞れず苦心している様だ。しかし捕手が後ろに逸らす場面もしばしば。
一回表でウチが5点を挙げても伊佐敷君はめげておらず、未だあの元気は健在。本当に元気な子だ。
その裏。伊佐敷君の豪快さはスイングにも現れていることを知った。ブンブン振り回していてその近くに座る雅功が嫌そうな顔をしているのが見える。
当たったら怖いなと思った次の瞬間、バットがボールを捉えた。ツーランホームランだ。
大声を発しながらベースを回る彼を見てまた微笑ましくなった。
それにしても今日のウチのエースは調子が悪そうだ。四球も出しているし、伊佐敷君につられてしまっているのだろうか。チラリと監督を盗み見るとバッチリ目線が合ってしまった。
「眞白、今すぐ肩作ってこい」
まじですか。
その後、ヒットを浴びながらもその2点で抑えた。
二回裏から私がマウンドに上がる。その回は三者凡退に抑えた。
三回表はスクイズをして得点を収め、三回裏も完璧に抑える。伊佐敷君はインコースが苦手のようだったので、とことん投げさせて貰った。ごめんね。
結果は8対2の圧勝。それなのに伊佐敷君の元気さは衰えていなかった。むしろ私の方がその元気さに当てられて少しゲンナリするほど。
「次はぜってー勝つ!」
最後に直接、私に言い残して彼は去って行った。そのガニ股で歩く後ろ姿を見ていたら本当にポメラニアンに見えてくる。
「可愛いなあ」
「どこがだよ」
雅功は分かってない。君もたまに可愛いけどね。
「おい、今なんか気持ち悪りぃ事考えただろ」
「えー?」
「面がニヤけてんだよ!」