今日は日曜日。朝のメニューが終わり、朝ご飯を食べていると携帯が震えだした。
開くと珍しい人物からの電話だった。
「どうしたの?」
「ぶはっ眞白さんって最初もしもしって言わないんスね…どうしたのーって…なんか笑える…」
電話の主は御幸君だった。笑い続ける彼を静かに待つ。君のツボが未だに理解できないんだけど。
「はー笑った笑った…」
「で、こんな朝から用件は?」
「眞白さん今日空いてません?」
頭の中で予定を浮かべる。今日は朝晩のメニューを念入りにこなし、データ収集するつもりだった。特に予定という予定はない。
「空いてるけど」
「あ、やっぱり?眞白さんなら今の時期暇だと思った」
「は?」
「オレと遊びません?」
聞くとシニアの練習は休みらしい。おそらく御幸君は暇を持て余した結果、私にたどり着いたのだろう。なんて失礼な奴だ。
「ならウチにおいでよ」
「はい?」
一時間後。最寄駅の改札前で御幸君を待つ。彼の絶妙にダサい私服のおかげで改札を抜けて来た時、直ぐに分かった。
お母さんとかが適当に買ってきたのだろうか。…そういえば御幸君も私と一緒で試合に親御さんが来ているイメージがないな。
「御幸君!」
「…眞白さん?うわ、ちゃんと女子だ」
本当に君は失礼だな。
ワンピース着ているのがそんなに違和感あるのか。澪お姉ちゃんのおさがりだし趣味は良いと思うんだけど…
「行こっか。途中でスーパー寄っていい?」
「…ッス」
…なんか余所余所しい。この子もしや緊張しているのだろうか。鳴と同じ人種でなくて本当に安心した。高校でイケメンと持て囃されてもそのままでいて欲しい。
いつも余裕綽々な彼がドギマギしているのは面白い。借りてきた猫みたいで可愛いし、このまま放置してみよう。
スーパーでお昼ご飯の材料を買い込み、家に着いた。ここにきて彼は「手土産とかないんスけど…」と焦りだした。本当に可愛い。
「気にしないで、家の人いないし」
「へえ…って…えっ?!いない?!」
「うん、いない方が気楽でしょ?」
「えっ?!あっいやぁ…まあ?」
「はいはい、上がって」
「お、おじゃまします…」
いつもの御幸君はどこへ行ったのやら。反応がいちいち中学生臭くて本当に可愛い。普通中学生ってこんな感じだよね。思わずほっこりしてしまう。
買った食材を冷蔵庫にしまっていると居間の方から声がした。冷蔵庫を閉めてそちらに向かう。居間で御幸君はトロフィーなどが飾られている棚に釘付けになっていた。
「すげー…」
「それほとんどお父さんの」
「お父さん野球やってたんだ?」
「今もやってるよ、二段目の棚とか最近のやつ」
「…最多勝利投手賞って…眞白さんのお父さんって野球の田之倉選手?!」
「うわー!まじか!」と興奮した御幸君がお父さんの投手としての魅力を延々と語ってくれた。そう言えばお父さんが野球選手だと教えたのは彼が初めてかもしれない。