多めに作ったつもりが御幸君がペロリと平らげてしまった。男子中学生の胃袋なめてた。
食後にもノートを見ている御幸君を脇目に私は夜ご飯の準備に取り掛かる。今度はそれに気づいたのか御幸君が顔を上げた。
「眞白さん、まだ食べんの?」
「これは夜ご飯」
「早くね?」
「夜のメニューこなしてから作る気になれないから今のうちに作っとくの」
そう、お父さん特性夜の特訓メニューをこなしてからご飯なんて作る気になれない。しかし食べなければ育ち盛りの中学生の体には悪影響、そのためお昼ご飯の後にとっとと作ってしまうのが私の休日の過ごし方だった。
「夜のメニュー?」
「そうだ、御幸君も一緒にやってみる?」
きっと私は今、相当悪い顔をしているに違いない。あの御幸君が若干引いているのだから。
夜ご飯を作り終えた後、洗濯物を取り入れ、綺麗にたたみ、一通り掃除をした。その間中ノートを見ていた御幸君の集中力は本当にたまげたものである。
「そろそろ行こっか、これに着替えて」
私の練習着を渡す。彼とはあまり身長も変わらないため問題ないだろう。嫌な予感を感じ取っているのか曖昧に笑う御幸君。君の判断は正しい。
入念にストレッチをしてから玄関を出る。
「さ、走ろっか」
「げ…」
「はい着いてきてねー」
このランニングは道中、ダッシュやインタバルラン、シャトルランを含めた恐ろしいものである。走り始めた頃はよくこんなコースを思いついたものだとお父さんを恨んだ。
家に帰ってくると御幸君は倒れ込んだ。
「だいじょーぶ?とりあえず飲み物飲もっか」
担いで庭に連れて行く時、小さく「……あんた…バケモンかよ…」と呟いていたのは聞こえなかったふりをする。
塩を混ぜたスポドリを補給し、御幸君を縁側に座らせたまま私は体幹トレーニングを始める。それを終える頃には御幸君も少しは回復していた。
急に走らせてしまい無理させたのかもしれない。少し反省。いつも一人で黙々とこなすメニューに誰かが一緒だとつい嬉しくなってしまった。
「次、素振りするけど御幸君もやる?」
「ッス…」
目が死んでるけど大丈夫だろうか。
素振りを続けていると御幸君は途中で辞めてしまった。
「いつまでやるんですかね」
「メニュー通りだと御幸君はあと350位かな」
「さん…っ?!?!」
「いきなり500やれとは言わないから安心して」
「……あんた本当にすげーよ」
「このあとシャドーもやるけど御幸君はやらないでしょ?」
御幸君は静かに頷いた。