「すっかり忘れてたけど本当の用件は何だったの?」
夜ご飯の食卓で御幸君に問いかける。夜ご飯のメニューは煮物とお浸しと肉団子とご飯お味噌汁の和食セットである。
彼は元々食べる予定ではなかったが、あまりにも疲れ果ててしまいここで食べて行くことになった。その際、彼はメールを一本入れるだけで済ませていた。まあそういうことである。
しばしの沈黙から御幸君が口を開いた。
「眞白さんって高校どこ行くんですか?」
敬語に戻った。と思ったけど何も言わないでおく。ちょくちょく敬語が抜けるのはご愛嬌といったところか。
「青道高校だよ」
彼は大きな目で瞬きを繰り返した。そして突然笑い出す。本当にこの子のツボは浅すぎやしないだろうか、しかも絶対人とかなりズレたところにある。
御幸君の笑いが収まる頃には煮物を食べ終わっていた。
合格発表の時は少しドキドキしたものの、見事合格を果たしたのは数週間前。余程テツ君に言おうかと思ったがここまできたら隠し通すことにした。
お父さんはとても喜んでくれたし、高島さんからはわざわざお祝いの電話までしてくれた。美人って本当に抜かりない、そう思うのは偏見だろうか。
「なーんだ、実は眞白さんがどこに行くのか気になって聞くために会いに来たんですよ」
今度は私が瞬きする番。
「なんで?」
「いやいや!シニアのほとんどの連中が二重人格ピッチャーの進路知りたがってるんで!」
なんだそれ。おかしな理由に少し笑ってしまう。それに二重人格ピッチャーと面と向かって言われたのは初めてだ。
「もしかして御幸君も青道高校行くの?」
「中一のころからラブコール貰ってるんでおそらく」
「じゃあ一年先に入って待ってるね」
これからが尚一層楽しみになった。
「眞白さんって意外とよく笑いますよね」
「それ普段笑ってないみたいな言い方じゃない」
「実際そうでしょ!試合の時笑ってんの見た事ないっすよ?!」
そんな怖い顔しているだろうかと記憶を振り返るものの身に覚えがない。ああマウンドに立っている時はたしかに怖い顔しているかも。
「そう?」
「すっげーこえーもん、眞白さん」
御幸君は身震いして見せた。
食べ終わった後は駅まで送り届け、解散した。たまにはこういった休日を過ごすのも悪くない。
吐く息が最近薄くなり始めた。今年は雪が降らなかったな。
空を見上げると綺麗な月が顔を出していた。