卒業式の恒例行事

卒業式の朝、目覚めると机の上に箱が置いてあった。この風景を見るのは二度目だ。一度目は小学校卒業の時だった。その時の中身は青色のネックウォーマーで今でも大切に使っている。

開けてみるとそれは青色のリストバンドだった。お父さん、完璧に私が青色好きだと勘違いしてる。嫌いではないけど。ランドセルの色はテツ君に合わせただけだというのに。

学校に着くと昨日のリハーサル通りに事は進んだ。ほとんど持ち上がりのため泣いたりするような子はほとんどいない。

滞りなく終わると写真大会が始まった。私は外に出るだけあって色々なところから呼び出され写真を撮られる。ワーワーキャーキャー姦しい。こうして大勢の女の子同士で戯れるのも最後かもしれない。そう思うと少し感慨深かかった。

特定の友達がいるわけでもないためそそくさと帰る。雅功に連絡しグローブを手に河川敷まで走った。

ここだけの話、女の子の何人かに告白された。付き合うやらそういう下世話な話ではなく、ただ私が去ってしまうまえに一言告げたかっただけとのことだった。

あまりの初々しさにおばさんは心に傷を負った。こんな可愛い子たちを騙している気分。ただ顔を真っ赤にさせて言葉を紡いでくれる子達が本当に可愛くて思わず抱きしめそうになった。ロリコンではない。…いやもうロリコンの範囲ではないのか。


「凄いよね皆、情熱が」
「小せえヤツだな、そんな事で自慢すんな」
「自慢じゃないよ、私には真似できないから凄いなあって思って。僻むな僻むな」
「僻んでねえよ」

雅功と軽口を叩きながらキャッチボールをする。彼は昨日卒業式だったようで、今日は一日中、撮りためていた大河ドラマを見ていたらしい。

「雅功って彼女いないの?」

そう聞いた途端、物凄い勢いでボールがこちらに向かって来た。グローブに収めると良い音がする。

「ちょ、ごめんって。聞いた私が悪かった」
「……」
「無言はやめてよ怖いから」

次も牽制球並みに鋭いボールが飛んで来た。しかも顔面で思わず仰け反る。

「ってどこ狙ってんの!」
「お前の体がナマんねぇよう、特訓してやってんだ。有り難く思え」

理不尽!
その後も特訓と称した理不尽なキャッチボールは続いた。もう雅功には恋愛話を振らないことにしよう、そうしよう。

そういえば鳴に彼女がいるのはよく聞くけれど、他の子達はどうなのだろう。
御幸君はこないだの様子からしていなさそうだ。テツ君は…密かにいるのかもしれない。それなら最近の紳士的な行動にも納得がいく。マサ君は…考えたくない。彼にはまだ早い。
伸一郎は…いないと嬉しい。ピュアピュアなままでいて欲しい。いたらいたで大切にしそうだけれど。

「ニヤニヤした面しまえって何度言わせるんだテメェは」
「別に試合じゃないんだから良くない?」
「見ててムカつくんだよ」