彼女の系譜

リトル時代、エースナンバーを背負う。四番を担う。その事は無邪気に喜べる物ではなかった。

プレッシャーを感じるのは仕方ない。そう割り切れたら良かった。無駄に人生二度目のせいか色々見えてしまう。エースを狙っていた少年、四番を狙っていた少年、それらを両方押しのけてその地位に私がいる。本当にこれでいいのか、何度も繰り返し考え眠れない夜を過ごした。

考え抜いた結果、私は少年たちに何か声をかけるわけでもなく、プレーで答えることにした。


シニアに入り、私はエースを背負う事も四番を担う事もなくなった。それで肩の荷が下りたというのに心はそれで納得してくれない。投げたい。もっとあのマウンドで完璧なピッチングをしたい。それはたまにベンチから漏れ出ているようで雅功に何回か注意された。一応年上の余裕ではぐらかすけど。

この感情はただの独りよがりだ。捨てろ。未来明るい少年たちに活躍の場を譲ってやれ。

そうやって何度、自分を納得させようとしたか。しかし納得できなかった。納得できなかった分は全て練習に費やした。

二重人格ピッチャーと呼ばれようと、女だと蔑まれようと自分のやりたいことをその時、その瞬間、今後の人生後悔のないよう精一杯やる。そうしていれば周りは勝手について来る事を私は知っている。

ただ負けると眠れなくなるのはリトルからずっと治らなかった。


一度、キャッチャー陣に投手としての私をきいた事がある。

伸一郎は「フォームが綺麗で崩れませんよね。オラオラのクセにコントロール抜群だし、マウンドでの表情も迫力ありますし…当時は正直ビビる事もありました」とのこと。

御幸君は「どんな場面でも冷静に打ち取る投手ってイメージ。9分割してますよね?コントロール抜群でミット動いてるの見たことないもん。その上変化球もキレッキレ。鳴と違って周りもよく見えてるし。何より根っからの投手気質で女子にしとくの本当にもったいない」とのこと。あと「一度でいいから本気の眞白さんの球を受けてみたい」とも言ってたっけ。もちろん意地悪で投げてやらないけど。

雅功は「自信家、暴君、顔怖ぇ、うるせぇ。のくせに鳥肌立つほどコントロールが良いのが尚腹立つ。あとは変化球の変化が大き過ぎる。取る側の身にもなれ」とのこと。

意外と評価が高くて驚いたのは記憶に新しい。

コントロールは家でお父さんに鍛えてもらった甲斐があったというもの。本当に野球に関しては厳しい。それ以外は甘々だというのに。

ただお父さんは私の試合を一度も見に来る事ができなかった。普通の子供ならグレるところだぞコレ。まあ仕方ないし別にこれ以上認めてもらいたいとは思っていない。


エースで四番から控え投手で代打要員からの野球部のマネージャー。他人から見たら右肩下がりの人生かもしれない。それでもいい。私の目標は少年たちを輝かせる事だから。