試験が終わり、練習が再開された。
結果は一年生全員赤点回避。それを知った時、嬉しさのあまり貴子と手を取り合った。本当に良かったと心底思う。貴子と二人で自作問題集とか作った甲斐があった。
そして六月に入ると夏直前合宿が始まった。マネージャーも泊まり込みで部員のサポートをする。
相変わらず東先輩には怒鳴られっぱなしですけど。
夕方になると先輩マネさん達に食堂へ連れていかれた。何かと思えば差し入れに大量のおにぎりを作るらしい。
「眞白、上手い…私ガタガタになっちゃう…」
「だいじょーぶ!練習あるのみ!」
「……そうよね!」
貴子は必死で握っていたのか髪の毛に米粒が付いていた。可愛い。
取ってあげると顔が真っ赤になっていた。可愛い。
「そういえば#name4#と結城くんって幼馴染なんでしょ?何かないのー?」
先輩マネさん達がニヤニヤしている。やっぱり恋バナは定番なのか。
「ただの幼馴染ですって。私より貴子の方が面白いネタ持ってますよ」
「えっなになに!」
「ちょっと!眞白!」
「教えなさいよー!」
美人が照れて困っている姿はなんと絵になる事でしょう。
恋バナに花を咲かせつつおにぎりを着実に握っていく。三年生の先輩マネはもう握り終わっており、私たちの分を手助けしてくれた。さすがです。
「お疲れ様でーす!」
先輩マネさんが叫ぶと部員達がわらわらと集まってきた。こうしてみるとやっぱり人数多いなあ。
「これ全部マネさん達が?!美味そう!」
「えーっとぉ…」
伊佐敷君の言葉に貴子は気まずそうに眉を下げた。私は後ろから彼女の腰辺りを軽く叩いてアイコンタクトを取る。だいじょーぶ、頑張れ。
貴子は力強く頷いて持っていた銀のトレーを前に置いた。
「それは先輩が握ったので…私たちのはこれ」
貴子が「誰も食べてくれなかったらどうしよう」と心配していたのを他所に、部員達は次々とそのトレーからオニギリを取っていく。
そりゃそうだ、こんなに美人が握ったんだから。それに形が汚いくらいで食べない失礼な奴はこの部にはいない。
「これなら俺!一日中でも頑張れるぜ!」
「沢山あるから遠慮なく食べてね!」
貴子もようやく肩の力が抜けたようで一安心だ。伊佐敷君のそれは天然なのか気遣い屋なのか。見た目の割に言葉選びが上手い。
「そうだ!どんどん食え!まだまだ練習は続くからなあ!」
「うすっ!」
東先輩に伊佐敷君は元気よく答えた。これが後で彼を苦しめる事となる。
私は幸せそうにオニギリを頬張る増子君を見て癒された。
「増子君食べっぷりいいから見てて気持ちいいよ」
「#name4#!そいつに食わせすぎるな!増子!お前はもう食うな!」
確かに、食べ過ぎるとこの後吐いてしまうかもしれない。さっき先輩達がコソコソとこの後のランメニューについて話してたし。
小湊君はひとつ食べ終わるとトレーに手を伸ばした。
「#name4#が握ったのってこっちの綺麗な方?」
「そうだ」
「なんでテツ君が答えるの」
私の横で黙々とおにぎりを食べていたテツ君は何故か誇らしげだった。