合宿の間、一年生はほぼほぼ走らされていた。最終日に近づくにつれ、疲れが溜まっているのだろう。珍しく小湊君が授業中に突っ伏して寝ていた。彼はいつもバレないように寝ているというのに。
「珍しく爆睡してたね」
「先輩たちが眠らせてくれなくてすごい寝不足…」
パシられたりマッサージを強要されたりゲームに付き合わされたりするらしい。どうりで夜中もうるさいわけだ。
マネージャー部屋はそんな事はなく普通に就寝する。ただ恋バナに火がつくとなかなか眠らせて貰えないけど。
「#name4#〜教科書寮に忘れてきちまった…貸してくれ」
隣のクラスからやって来た伊佐敷君も大分眠そうだ。珍しく覇気がない。
教科書とオマケにチョコレートを渡して隣のクラスに送り返した。
「シロ、ボタンが取れた」
次に現れたのはテツ君。やはり眠そうだ。
気がついたらブレザーのボタンがなかったらしい。慌てて購買でボタンを購入し縫い付ける。ブレザーを受け渡すと共に昆布のお菓子をあげた。
「#name4#…すまん、英語の課題写させてくれ」
珍しく門田君が現れた。彼はいつもちゃんとやっているのにこんな事もあるのかと目を丸くする。疲れて切ってやる前に寝てしまったらしい。そんな彼にもチョコレートをあげた。
「増子君、次移動だよ、起きて」
「うがっ…」
「オニギリあげるからそれ食べて頑張ろ」
寝ていた増子君を無理やり起こして化学室まで背中を押して歩く。重い。重すぎる。オニギリを食べ切った後、ちゃんと歩き始めてくれて良かった。
化学室から戻る時、長身の彼がフラフラと歩いているのが見えた。グラリと傾いたのを見て咄嗟に駆け寄り体を支える。
「丹波君!しっかり!」
「あ…ご、ごめん…」
「これ食べて元気出して!」
「…ありがとう…」
チョコレートと増子君用に用意していたオニギリを押し付けてクラスまで送り届けた。
英語の時間、音読の順番が迫って来た。隣の席の坂井君は爆睡していて気づいてない。グイッとワイシャツを引っ張って起こし、無言で教科書を指差して彼が読む位置を教える。
こうして彼は無事音読を済ますことができた。眠気覚ましの飴をスッと彼の机に忍ばせてアイコンタクトを取る。頑張れ!高校生!
「なんなの、お母さんの次はお菓子の妖精?」
「小湊君もチョコレートいる?それとも飴?オニギリもあるけど」
「そのオニギリ、明らかに手作りだけどどうしたの?」
「朝早めに起きて握ってきた」
彼は何故か深いため息を吐いた。疲れているのかと頭を撫でようとしたらいつものように弾かれる。あ、ちょっと元気出たのかな。
……小湊君、顔怖いよ。