合宿五日目。一軍選手に監督自らノックが行われた。なかなか終わりそうになく、先輩マネさんに言われてナイターを付ける。
監督の鋭い打球について行く先輩達も凄いが、それを一人で相手している監督も凄い。ノックが終わった瞬間、監督にドリンクとタオルを手渡すと一気に飲み干してから「助かる」と一言言って去っていった。残された私はその場に立ち尽くす。何アレ何アレ。カッコ良すぎる。
その夜の恋バナで先輩から理想のタイプを聞かれ、私が迷わず「監督です!」と答えたらドン引きされた。
六日目の夜、明日からの練習試合のメンバーが発表され合宿は幕を閉じた。
練習試合一日目は大阪の大阪桐生、二日目は東東京の修北と西東京の稲城実業と三つ巴対決。
稲城実業は雅功がいるから普通に楽しみだ。彼が連絡不精すぎてほとんど連絡とってないし、寮生活だから簡単に会うこともできない。
ただ相手チームのマネージャーと知り合いだと周りに知られて嫌なのは雅功だろう。
知らないふりをするべきなのか否か。そう考えていたらその日を迎えてしまった。
ちなみに大阪桐生の一年生投手、館君は笑顔がとても印象的だった。ピッチングがとても魅力的でこれからが楽しみな選手だ。
当日、私が稲実を、貴子が修北の迎えにつく事になった。
ドキドキしながら待っているとバスがやって来た。降りて来た部員一人一人に挨拶をする。彼らが「女マネだ!」「可愛い!」と騒いでいるのに気づかないふりをして挨拶をし続けていたら、雅功が降りて来た。少し体が大きくなったと思う。
彼は私と目が合うと目を見開いた。おお、驚いてる。してやったり。もちろん知らないふりをしてあげた。目が合った瞬間、ニヤリと笑ってしまった位は許してほしい。
昨日、先輩がやっていた通りに、稲実の皆さんを誘導しつつ水道やお手洗いの位置を教える。
オーダー表を受け取ると雅功の名前があり嬉しくなった。二軍とはいえ四番キャッチャー。さすが雅功。
その時、また雅功と目が合った。「ニヤついてんじゃねぇ」と言いたいんですね。前より凄みが増した気がする。
「眞白、何か良いことあった?」
「ちょっとね」
ふふふと笑いが漏れてしまった私を見て、貴子は首を傾げていた。そんな姿も可愛い。
「#name4#ー!ライン引きここ置いとけゆうたやろ!」
「貴子ごめん、ちょっと行ってくる」
「行ってらっしゃい!」
彼女は私にグッと握りこぶしを見せて鼓舞してくれる。私もそれに答えて握りこぶしを作って見せた。