第二の試練は甘くない

しばらくの間、私は野球部の人達に雅功ネタでからかわれた。しかし私が反応をあまりにも示さないので飽きたのかそれもなくなった。

一番納得させるのに苦労したのはテツ君。あれだ、母親を取られた子供の気持ちなのだろう。

「シニアの時、見たことあるでしょ?」
「…何かが違った」
「いや一緒の人だからね」
「………」

結局、彼は「何かが違う」と主張し続けた。さすがに私も汲み取る事ができない。時間が経つのを待つしかないのだろう。


夏直前合宿が終わり、私たちの前には次なる試練が待ち構えていた。期末試験である。前回とは科目数、範囲が大幅に異なるため難易度は高い。

前回同様、食堂で毎晩勉強会を開いた。

「藤原、どの活用覚えたら良いとかある?」
「一番覚えなきゃいけないのはこのページね」

「#name4#、これどうやっても理解できないんだけど」
「説明するから教科書持ってこっち来て」
「あ、俺もそれ分かんねえ」
「じゃあ二人並んでそこ座って」

「宮内…これ覚えなきゃダメか?」
「その化学式はそのままテストに出るらしいぞ」
「マジかよ…」

今回の勉強会にクリス君は参加していない。この期末試験が終わればいよいよ夏大が始まる。なので一軍入りを果たしている彼が自主練に集中できるよう参加させなかった。それは一年生全員の意見である。

ただ、彼が教えていた英語と古典の穴は英語は坂井君頼み、古典は貴子頼み。テツ君も古典は得意なのだがいかんせん教え方が悪い。感覚で伝えてしまうので私以外誰も理解できないのだ。


そして怒涛の期末試験は終わり、練習が再開。しかし今回は全員が赤点回避には至らず。伊佐敷君、槙原君、桑田君がそれぞれ赤点を一つずつ取ってしまった。

なんとか補習は勘弁してほしいと貴子と二人で先生方に何度も掛け合った結果、追試を一発合格できたら参加しなくても良いとのこと。これは本腰入れてやるしかない。

三人にはそれぞれマンツーマンで教える事に。伊佐敷君は数学なので私が、槙原君は化学なので宮内君が、桑田君は古典なので貴子が担当する。

「まず体に染み込ませろ!筋トレしながらやると効果的だぞ」
「お、おう…」

「この助動詞があるとこういう訳になるんだけど…」
「…さっぱり分かりません」
「…一から説明するわ」

「ここからここまで解かないと眠らせないから覚悟してね」
「何か一人だけテイスト違くね?!」
「はい、口じゃなくて手を動かして。よーいスタート」
「やってやんぜオラァ!!!」

こうして、努力の結果、三人は追試を一発で合格する事ができた。

「#name4#って教える時、ちょっと怖いよね…」
「貴子はもう少し厳しくてもいいと思うよ」
「そうかしら…」