ポジティブモンスター

オフが終わり、新チームが始動し始める。マネージャーも三年が引退し引き継ぎが行われた。

その時渡されたのは青道高校野球部日誌というノート。二年生の先輩は書き方を事前に教わっていたらしく私と貴子は二年生から教わることになった。
沢山の付箋が貼られ、沢山の新聞記事が並び、沢山の綺麗な文字が並ぶ。これは三年生の歩んで来た道のり。その一歩一歩が丁寧に書かれていて先輩がどれだけ部員を見ていたのか思い知らされる。

貴子の頬に一筋の涙が流れた。その涙の美しさに思わず息を飲む。意外と感受性豊かなんだよなこの子。

「だ、大丈夫?!貴子」
「泣いてんの?!」

貴子の様子に慌てる先輩達。私は貴子の背中をさすってやる事しか出来なかった。

「…先輩の想いが凄く伝わって…感極まってすみません」

三年の先輩マネさんも二年の先輩マネさんも切なさと嬉しさが交わったような表情を浮かべている。
三年の先輩は特に目元が赤くクマがクッキリ残っていた。昨日も泣いて過ごしたに違いない。ツキンと胸が痛んだ。

「ったく、#name4#も涙ひとつくらい見せなさいよ!」
「そうそう!試合終わってすぐもテキパキ動いてくれたから凄く助かったけど」
「ビデオも撮って来てくれたんでしょ?タフよねー」

「このこの!」と脇を突かれる。確かに可愛げがないかもしれない。けれど私に涙を流す権利はない。

二度目の人生ゆえか、プレーヤーの時も涙を流すことはなかった。悲しくないわけではない。そういえばこの世界で私は泣いた事があっただろうか。

「先輩達の分まで頑張りますね」
「さすがポジティブモンスター…笑顔が眩しい!」
「あんた程前向きな人見たことないんだけど」
「そのポジティブモンスターって誰が言い始めたんですか、前はポジティブ怪獣ですよね?」
「え、#name4#知ってたの?」
「私そのポジティブ怪獣の方知らない!」
「私は逆にポジティブ怪獣しか知らないです!」
「いや、どっちも同じ意味ですよね?」
「たしかに!」

わちゃわちゃと揉まれながら先輩や貴子を盗み見る。さっきまでの表情が嘘みたいに笑っていた。

私は上手く笑えただろうか。


「#name4#!」
「はい!今バケツ持っていきます!」

「おい#name4#!」
「はい!こちら追加のドリンクです!」

最近東先輩に怒鳴られる事が減って来た。らしい。正直私はまだまだ怒鳴られてばかりだと思っていたら二年の先輩がそう教えてくれた。

さすがに東先輩が言いたいことを先回りするようになったけど。言われるうちはまだまだだ。