今日も貴子と一緒にオニギリを握る。本当に三角にするのが上手くなった。少し前のガタガタオニギリが嘘のようだ。
「眞白って昔野球やってたの?」
ツナマヨを詰めながら貴子は首を傾げた。私はおかかを混ぜながら答える。
「小中でやってたよ。だからほら」
手のひらの豆を見せると彼女は目を丸くした。昔やってたというより今でも家でバット振ってるけどそれに触れる必要はない。
「すごい…硬いね…」
プニプニと豆を押されるのはくすぐったくてかなわない。ただこれで何人の男が落ちるだろうと一人目算してしまった。
ふと思う。ここで言うべきだろうか。前もって彼女に伝えておきたいと常々思っていたからいい機会かもしれない。
私は握り終わったオニギリをトレーに置いた。
「貴子…私ね、来年からチームのデータを集めたり分析する事になってるの。もちろんマネージャーを辞めるんじゃなくて兼任って形だけど」
突然話し出した私の言葉に彼女は真摯に耳を傾けてくれる。
「だから貴子にはこれから苦労かけると思う…迷惑かけてごめん」
深々と頭を下げる。こんな事で許されるような事ではないがチームのためなら私は何だってする、そう決めたのだ。
「そうなんだ…」
「うん、今まで黙っててごめん、いつか言おうと思ってたんだけど遅くなった」
「ううん、言ってくれて嬉しい…全力でサポートするから!眞白は気にせず頑張ってね!」
「ありがとね、でもマネージャー業も出来る限り頑張るからそんなに気負わないでね」
本当に彼女は良い子すぎる。マネージャー業を投げ出すな!と怒ったって無理はないのに。
すると「私こそ…」と言い始めた彼女の目には水が張っているのに気づいた。
「眞白が東先輩に色々言われてるのに…何にもできなくて本当にごめんなさい…不甲斐なくて…」
ダムが決壊したかのようにポロポロと泣き出してしまった。
慌てて手をエプロンでぬぐい、彼女の元に駆け寄る。
「だいじょーぶだから、そんなに思い詰めなくていいんだよ」
「でも…いつも眞白が怒鳴られてるのに…私何にも…」
「あれは東先輩の愛情表現?らしいから!私も気にしてないし!貴子も気にしないで?」
「うぅ…」
涙を流し続ける姿はまるで少女のよう。私は堪らず抱き寄せて頭を撫でた。
「だいじょーぶだいじょーぶ。落ち着いて。深呼吸して。貴子からエール貰えるだけで私は頑張れるから。何にもしてないなんて言わないで?」
「眞白〜」
今まで色々溜め込んできたのだろう。彼女が泣き止むまで少し時間がかかった。
そして食堂のドア付近に突っ立っている影を睨みつける。乙女の涙を覗くとは何事か。
「そこの盗み聞き三人衆出てきなさい」
「うわっ」
「あ、やっぱりバレてたか」
「うがっ」
「へっ?!やだ!恥ずかしい!いつからいたの?」
「藤原が泣き始めた頃かな」
「小湊!言うな!」
小湊君、伊佐敷君、増子君が出てきた。やっぱり君たちか。
「ほら罰としてトレー持って」
「はーい」