学生の宿命

夏休みが終盤に近づいてきた頃、監督からお話があった。

「夏期休暇課題を一つでも提出しなかった者にはペナルティを課す」

とのこと。一気に部員達の顔が青ざめる。この光景は少し面白い。私は全部終わっているからなんて事はないが波乱がありそうだ。


その日の練習が終わった後、一年生全員が私と貴子の元に詰めかけた。

「マネ様方、課題を写させてください!」
「「「しゃすっっ!!!」」」

一斉に頭を下げる一年生はとにかく必死だ。貴子は困惑してるようだけど私は可笑しくて吹き出してしまった。

「君たちさ、私たちが課題終わってなかったらどうするつもりだったの?」
「哲が#name4#ならやってるって情報をくれたからそこは抜かりないよ」

小湊君の用意周到さに脱帽するしかない。テツ君は何で誇らしげなの。

「仕方ないなあ」

頼られると弱いのだ。歓喜に沸く彼らを見て一息吐いた。

貴子はまだ全てが終わっているわけではないらしく古典と数学のみ、私は全てを貸し出すことに。それをどういうルートでノートを回すかは彼らに決めてもらった。

こうして夏期休暇課題の問題は幕を閉じた。かのように思われた。


数日後、授業開始が明日に迫った日。何故か一年生全員が私によそよそしい。貴子に聞いても目をそらされるばかり。明らかに様子が可笑しいのだ。

「伊佐敷君あの…」
「わ、わりぃ!先輩に呼ばれてんだ!じゃあな!」

「小湊君少しいい?」
「ごめん、ちょっと今忙しい」

「ねえ増子君…」
「か、監督に呼ばれてる!」

「楠木君、門田君、あのさ」
「あー!俺部長に呼ばれてんだった!」
「俺も呼ばれてた…はず」

「貴子今平気?」
「ご、ごめんなさい!」
「何が?!」

………。これはもしや。
どの一年生にも視線を逸らされて話を出来る状態ではない。明らかに避けられている。
困った時のテツ君頼みだ。

「テツ君ちょっと良い?」
「む、なんだ」

私がテツ君と話し出すと一年生はギョッとしてわらわらと集まってきた。

「て、哲!お前バット片付け忘れてただろ!片付けてこいよ!」
「そうそう、俺も一緒に行くからさ」
「じゃあその後で良いから少し時間欲しいんだけど」
「その後は!その…先輩が呼んでたぞ!」

必死に私をテツ君から引き離して行く。君達嘘つくの下手過ぎるからね?

その夜、一年生が自主練に中々来ないので探していると食堂で何やら一年生が集合しているのが見えた。なんと貴子も一緒だ。

食堂に入らず立ち聞きしていると皆の声が聞こえきた。

「なんかアイツ感づいてなかったか…?」
「いや大丈夫だろ…哲の時も何とか上手くカバーしたし」
「俺はやはり正直に言うべきだと思うが」
「それができたら苦労しねぇよ!」
「#name4#の宿題、全部行方不明だなんて知れたらただじゃすまねーぞ!」
「結局誰が最後に持ってたんだよ」
「坂井じゃねぇの?」
「ちげぇよ!田中に渡したぞ」
「渡されてねぇっつの」
「いーや!渡した!」

思わずため息が出た。ただ面白いのでもう少し様子を見よう。