夏休みが明け、新学期。
席替えがあり、窓際を願ったがあえなく反対の廊下側になってしまった。悔しい。あと小湊君とはまた近い席になった。何か縁があるのかもしれない。
「#name4#って下の兄弟いる?」
前に座る小湊君が休み時間中、振り返った。
「いないよ。そう見える?」
「まあね、世話焼きだし叱るの上手いし」
にっこり笑う彼の言いたいことは何となくわかる。新学期始まる直前の課題行方不明事件の話だろう。
なんだか恥ずかしくて注意を逸らそうと話題を探す。
「小湊君は可愛い妹がいそう」
「残念、妹じゃなくて弟」
お兄ちゃんしてる小湊君を想像して微笑ましくなった。すると突然、片頬を思いっきりつままれ伸ばされる。
「何、ニヤついてんの?この辺ダルダルなんだけど」
「いたいいたい」
その後、直ぐに先生が教室に入ってきてくれたおかげで私の頬は伸びきらずに済んだ。結構本気で痛かった。ヒリヒリする頬を抑えていると小湊君は意地悪い笑顔を浮かべている。酷いやつだ。
「小湊君の弟ってやっぱり可愛い?」
次の休み時間、彼の背中に話しかける。クルリと振り返った彼は迷わず私の頬に手を伸ばした。
「いたいいたい」
「やっぱりって何?どういう意味?」
失言だった。いやだって君可愛いんだもの。そりゃあ弟君にも期待しちゃうでしょ。いたいいたい。あ、やっと離してくれた。
「俺の真似ばっかしてるようなヤツだよ」
「…弟ってそういうもんでしょ?可愛いじゃない」
小湊君は瞬きを一つした。
私にとって弟といったらやはり鳴。彼も私の真似ばかりしていたのを思い出す。その姿が可愛くて仕方なかった。しかしそれは私だけだったのだろうか。
彼はまた口角を釣り上げて私の頬をつまみ上げた。
「いたいいたい」
「なんかムカつく」
「りふじん!」
昼休みはいつも貴子と共に昼食を食べる。最近スコアの付け方が大分様になって来た彼女。球種はどうやって書いたら良いのかと相談を受け感動したのは記憶に新しい。
着々と成長しているのは選手だけではないのだ。
「あれ、眞白、左ほっぺ赤くない?大丈夫?」
「大丈夫なんだけど…小湊君が休み時間のたびに抓るから…」
思い出すだけでも痛くなる。かなり本気で抓ってるに違いない。
「ちょっと待ってて」と言って席を離れた貴子は濡れたタオルを持って席に戻って来た。
「これで良かったら冷やして?」
気のせいかもしれないが、彼女の後ろから後光が差して見える。女神かな。
「貴子…本当にありがとう」
「どういたしまして!」
彼女の笑顔が眩しくて思わず頭を撫でてしまった。
「こんなに良い子に育って!いや育ててないけど!優しい子だ!」
「…眞白ってよく頭撫でるよね」