投手に甘いんです

秋大の一次予選が始まった。
ブロック内に強敵はおらず、青道はコールド勝ちをしながら駒を進め、見事本大会への切符を手にした。

スコアラーは二年生の先輩マネさんが勤め、私と貴子は応援に徹する。クリス君はなんと正捕手に抜擢され、更に一年生が数人、ベンチ入りを果たした。その中にテツ君も含まれており、親の気持ちで見てしまうのは許してほしい。

ただ、試合があろうとなかろうと学生である以上、授業はある。

「今日は雨か…」
「今日の練習はウエイト重視だってさ」
「ボール触りてぇ…」

増子君、小湊君、坂井君が口々に言った。次が移動教室なため、彼らに挟まれて歩く。何故こうも野球部は固まりたがるのだろうか。いや、友達いない私にとってはありがたいけど。

二年のフロアに差し掛かった時、長身の後ろ姿が見えた。何故か大荷物を抱えている。私は思わずノートの類を増子君に押し付けて駆け出した。

「ちょっとごめん!先行ってて!」
「おい!#name4#?!どこ行くんだ!」
「授業始まるよ?」

彼らの言葉を右から左に受け流す。いや、それどころじゃないんだって。

「吉川先輩!」
「ん?#name4#か。慌ててどうした」
「何ですかその大荷物!持ちます!持たせてください!」
「いや…これ地学室まで持って行くから遠いぞ?それに重いし…」
「先輩は投手ですよ!もし万が一あったらダメなんです。なのでお願いします、持たせてください!」
「あ、あぁ…」
「あとそんな指先に負荷かかるような持ち方もやめて下さい!」
「悪い…」

先輩の荷物をほとんど受け持ち、いざ出発。そう思ったら持っていた模型を後ろから取り上げられた。

「あれ、坂井君。それに増子君と小湊君も」

三人が先輩に挨拶している横でポカンとしてしまう。あれ、先行っててって言ったはずじゃ。
小湊君が振り返りざまに私の頬を抓った。

「いたいいたい」
「何でそんなに抱え込んでんの、先輩逆に困ってんじゃん」
「俺らも手伝うからさ」
「任せろ」

次々に持っていた荷物が奪い取られて行く。ってあれ全部奪われた。

「待って、私何も持ってない」
「いーんだよ」
「せめて皆のノート…」
「これでバランス取れてるから邪魔しないでくれる?」
「はい…」

結局誰も何も持たせてくれなかった。マネージャー失格。申し訳なくて皆の後ろをトボトボ歩く。教室帰ったらお礼にお菓子あげよう。

「#name4#は投手に甘すぎ」
「確かに…丹波と一緒のクラスになったらなんかやばそうだな」
「………やばいで済めばいい方だろ」

しょうがないじゃない。元投手だし、どうしても投手贔屓になってしまうのです。私だって人生二度目とはいえただの人間だもの。